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2008-02-10

時津風部屋の力士急死事件を問う

今朝、大相撲・時津風部屋の力士急死事件で、容疑者である山本順一前時津風親方(57)が傷害致死容疑で逮捕された。
なんといおうか逮捕まで時間がずいぶんかかった気がする。ビールびんで殴ったという事実はすでに明らかになっていたので、素人目にはその時点で少なくとも暴行犯は確定、なのにこれだけ時間がかかると、申し訳ないが相撲協会が警察に圧力でもかけてるのかと思っていた。

まだ情報に不明なところがあるし、僕自身整理できるほど知識はない。だからまだたいした記事もかけない。でも、この事件については何か書いておこうと思った。それに....よりによって僕にとっては想い出多き愛知県警である。

僕の仕事は出版・印刷関係なのだが、一昨年学生相撲の大会にからんだパンフレットを作る仕事があった。そのパンフレットの最初の方のページに、りっ ぱなスーツで正装した北の湖理事長の写真を載せることになった。その写真原稿を見たとき、何と恐い顔をしているのだろうと思った。申し訳ないが「ヤ○○」 の幹部に見えてしまった。その北の湖理事長がTVで謝罪会見をしている。しかし、なんか人ごとのような謝罪である。そう思った人は多いだろう。

この事件が発覚した時、一時家に逃げて帰った息子を相撲部屋に帰した被害者のお父さんが、号泣しながら「せめて本当のことを知りたい」と言っていた のが、自分の思いでとない交ぜになって、強烈に頭に焼き付いた。亡くなった斉藤俊さんの遺体を、両親に見せる前に時津風親方が荼毘にふせようとしていたと いう信じられない話も、衝撃だった。
犯人が逮捕された今日、斎藤さんのお父さんの話す顔が、前よりやや落ち着いて見えたのが少しだけ救いだった。


でもこれは問題の終わりではなくはじまりであると思う。あくまで逮捕は区切りであってここからさらに関係者は考えていかなければならない。

あるネットの新聞が、逮捕まで7カ月余と異例の長期捜査となった原因についてこう書いている。

「立件までには、直後に検視をしないまま病死と判断した愛知県警の初動ミスのほかに、三つの壁があった。

最 初の壁は、師弟関係の強さ。前親方による口止めの疑いが最近明らかになったが、急死直後の事情聴取にも、全員があうんの呼吸で「けいこ中に突然倒れた」と 口をそろえたという。事実関係の解明が難航した。遺体解剖で、けいこでは説明できない傷の存在が判明。7月になって、死亡前夜の前親方によるビール瓶での 殴打や、兄弟子の暴行などを認める供述が得られた。

しかし、前親方による指示や木の棒での尻の殴打を話す弟子はいなかった。県警内でも指導の延長線との見方が強く、傷害致死と違って故意の立証が不要な業 務上過失致死容疑の適用が検討されていた。前親方主導の疑いが強まったのは9月。「鉄砲柱に縛り付けてやれ」との指示内容が分かったのは10月終わりだっ たという。

もう一つの壁は、プロの格闘家がけいこ中に死んだとして刑事責任を問えるか、との難問だった。刑法の規定で、正当な業務による行為は刑 事罰の対象にならない。プロボクシングの試合で相手が死んでも刑事責任は問われない。「かわいがり」と呼ばれるしごきで力士が死亡したケースが刑事事件に なった前例はなかった。一部の兄弟子は制裁目的だったと認め、他部屋の親方は「30分ものぶつかりはけいこの範囲を超える」と証言。だが、「通常のけいこ」とする前親方の主張を覆す科学的な裏付けがなかった。

県警は昨年末、力士に5分間のぶつかりげいこをしてもらい、筋肉の破壊で現れる酵素や筋運動で生じる乳酸などを計測。30分にわたったぶつかりげいこの異常さを浮き彫りにし、「けいこではない」と断定した。

三つ目の壁は、暴行と死の因果関係の医学的な立証だった。昨年10月に出た新潟大の鑑定書は、死因を「多発外傷による外傷性ショック死」とした。指摘されたのは、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)で、破壊さ れた筋細胞が血中に流れ込み、肺の毛細血管に栓をすることで肺水腫となり、呼吸不全に陥るとされる。ところが、ARDSは発症まで数日かかり、死因として は疑わしいとする異論が、臨床分野の専門家を中心に上がったという。

そこで、名古屋大に再鑑定を依頼した。浮上したのが、遺体の血液から検出された高濃度のカリウムだ。筋肉が強い衝撃を受けると血中に流出、一定時間で心停止を引き起こすことが知られている。これで2日間にわたった暴行が死に結びついたことが裏付けられた。

2回の鑑定に計約5カ月を要した。再鑑定結果が報告されてから逮捕までは6日間だった。」
(asahi.com:「捜査阻んだ三つの壁 力士急死、逮捕まで7カ月」)

ビールびんで殴られたのである。その事実は早くからはっきりしていたのではなかったのか。そんなとんでもない暴 行が、相撲の「けいこ」の範囲にはいるかどうか検討しなければわからないのか。そういう行為で人が死ぬかどうか、科学的に実験しなければならないのか。そ ういう行為の結果人が死んだという事実があっても、そんな蛮行が「業務上過失致死容疑」の「業務」とか「過失」という言葉の範囲に入るというのか!

「相撲協会の旧い体質が問題だ」と評論家は言う。でも僕達にはその体質がどんなもので、どんな体質だったからこの事件が起きたのか、かいもく分から ない。少なくとも北の湖理事長の会見の態度を見る限り、その体質とやらの奥に踏み込んで解明・改善しようとしているようには見えない。たしかに北の湖理事 長をバッシングしても何も始まらないのかもしれない。しかし批難しないことが責任者不在につながってもいけないと思う。
もしかしたら北の湖理事長 は、これぐらいの厳しいけいこはおれだって若いころザラに受けてきたんだと思っているのかもしれない。だとしたら自分も経験してきたそんな世界に、立ち上 がって疑問をもってもらわなければならないはずだ。そもそもビールびんで殴ったりすることを含めた蛮行を、「かわいがり」と称する世界とは何なのだ!

組織というものは、何か問題が起きたとき「トカゲのしっぽ切り」で終わらせたがるものだ。JR福知山線脱線事故の時もそうだった。事故を起こした死 んだ運転手が批難され、車掌が批難され、そうして事件の記憶は消失に向かう。「日勤教育」という奇妙な悪習が取り上げられたが、それをJR職員の普通の勤 務生活の一部であるように捉えてきた組織側の感覚とその奥にあるものは、十分な追求がなされただろうか。


「組織の体質」という言葉は便利である。「体質」と言っただけで何かが分かったような気がし、我々も事件を起こした組織のことを外から客観的に見たような気になって安心してしまう。
責任ある相撲協会が内部調査を続けるべきなのは当然のことながら、マスコミや評論家もここに見られた「組織の体質」がどのようなものなのか、追求していってほしい。それにここまで捜査に時間のかかった警察という組織の体質も取り上げられるべきではないか。

もう一度言おう。今日の犯人逮捕を問題の終わりにすべきではない、ここからが本当の捜査のはじまりである。

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