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2008-03-30

チベットの携帯電話

エントリ「チベット問題を積極的には報道しないある新聞」で、読売系TVの News ZERO で放送された「独占目撃チベットへ」のことを取り上げた。番組自体はさほどのものではなかったが、一つあれっと思ったことがある。それは、チベットの若い僧侶が携帯電話を使っていたことだ。

チベットの古風な寺院と赤い衣の僧侶に、現代の高機能な携帯電話。なんかその組合せがすでにチベット文化を壊してるようで、なんだかな〜。

ところが、ことはそう単純ではなかったというのが今日の話。

ここ最近、中国当局は「暴動」に関わった者に対して、各個人の携帯に自首するよう電話していると言う。日本であれば、個人の電話番号は各通信会社が管理しているから、警察などの要請があってはじめて犯人の個人情報を提供するという形になるんだろう。しかし中国では通信会社も国有だろうから、携帯電話の番号も国家の側に管理されているということになるのか。

ある日突然携帯電話が鳴って、「おまえをあの時の暴動で見た。すぐ出頭しろ!」...、ってか? めちゃめちゃ気持ち悪い国だなー。

彼らの携帯にGPS機能が搭載されていないことを祈る!

自首したら彼らはどんな目にあわされるんだろう。

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どんな目にか? 僕達が平和な頭で想像するには、チベット人の現実はあまりに悲惨。わかりやすく誰かが説明してくれないか? ということで「マンガで読むチベット」といこう。

国際法曹委員会の報告に基づいて、「わしズム」2007年 8/30号に掲載された業田良家氏作の漫画が、YouTubeに流されている。悲しい....。

http://www.youtube.com/watch?v=17DdYSwLH3A

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さて、もうネット上ではあちこちで言われていることだが、中国のメディア規制がますます強まっている。

このメディア規制に対して外国の批判が高まった結果、中国政府もほんの少しのポーズをとったようだ。しかし街の遺体は軍のトラックで運び去られ、蜂起の痕跡を消し去った後に外国人記者団を受け入れても、しらじらしすぎる。チベットの平和を演出すべく、大量の漢人のサクラ観光客を使い、行動の自由がないバスツアーで政府が指定した場所だけ取材させるという行為は、かえって不信をつのらせるだけ。

しかし、27日のニュースでは、この外国人記者ツアーでこんな事件も。

中国の計算にもほころびが出てきているのだろうか?

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というわけでその辺の情報規制に関するネットニュースを漁っていたら、これ。すでにこのブログで言及したことも含まれ、27日のニュースとは時間が前後するが引用してみる。

チベット騒乱 ほころぶ中国の情報統制 携帯・ネット“真実”流出 (産経新聞 2008年3月20日(木)13:28)

中国チベット自治区などでの大規模な騒乱の発生以降、中国当局は国内でテレビ、インターネット、電話を一部遮断するなど、情報封殺に躍起になっている。 ただ、その効果は限定的で、厳しい規制をかいくぐり、騒乱の画像や映像が内外に広まりつつある。情報統制は中国国民の政府への不信を高めただけではなく、 むしろ携帯電話やネットが情報流出に重要な役割を果たし国際社会を動かしたことにより、海外からの厳しい批判を招いている。(北京 矢板明夫、ロサンゼル ス 松尾理也)

北京にある産経新聞中国総局の衛星テレビには14日ごろから、電波障害が起きている。CNNやNHKをはじめとする外国のチャンネルでチベット関連の ニュースが始まった途端、画面が黒くなり音声も消える。次のニュースまでこの状態は続く。同様の現象は中国全土でみられるという。

なるほど....、実際YouTubeでは、CNNの記者が通信を切られる瞬間を記録した映像が流されている。テレビまでが国家の中央で管理されて いる国って、そら恐ろしくない?

ネットでは、チベット騒乱と関連するキーワードが検索不可能となり、米国に本拠を置く動画投稿サイト「ユーチューブ」も利用できなくなった。チベット自治区ラサに電話をかけても、寺院などは「回線故障中」の録音が流れ、不通になっているところが多い。

すでに YouTube を傘下に収めた Google が、中国国内での YouTube通信規制 に抗議するかしないかといったことが話題になっている。(でもしないんだろうな....)

中国当局は騒乱を「一部の暴徒の仕業」と印象づける情報戦略も始めている。チベット人とみられる若者が放火し暴れる映像や、親族を失った漢族被害者への国営中央テレビのインタビューなどを繰り返し放映している。

しかし、情報の遮断と操作による効果は、中国ではもはや限定的だ。チベット問題に関心の高い人は携帯電話のショートメッセージで情報を交換し、海外サイトへのアクセス制限を解除する専用ソフトを使うなどし情報収集をしている。

がんばれ! 香港のハッカーたち。こんなときWinnyも役に立つかもヨ。

チベット騒乱に関する中国当局の一方的な報道との違いを知った中国人は、自国メディア不信をさらに高め、外国メディアへの依頼度は加速した。「(中国共産党機関紙)人民日報は日付だけが信用できる」と揶揄(やゆ)する知識人もいる。

人民日報は日付だけが信用できるは、実に笑える名言!

一方、今回、反中国政府の立場から活発な情報提供を行っている非政府組織(NGO)「チベット人権民主化センター」(インド・ダラムサラ)は、中国四川省での抗議デモ中に治安部隊に射殺されたチベット人の遺体だとする写真をネット上で公表した。

現地の状況を伝える記事も連日更新されている。ユーチューブなどの動画サイトにも、携帯電話のビデオカメラ機能を利用して撮影されたとみられる映像が公開されている。中国では閲覧規制がかけられたが、海外には及ばない。

こうした状況を米紙ワシントン・ポストのコラムニスト、アン・アップルバウム氏は「昨年はミャンマーから、そして今年はチベットから、不鮮明で素人くさ い画像がインターネットに流れた」と指摘する。アマチュア画像の絶対量はまだまだ小さいものの、「携帯電話は、一部の東アジアにとって、ニュースを伝える ためのもっとも重要な手段となった」と強調した。

中国当局が外国人のチベット入りを禁止した措置に対し、17日の中国外務省の会見では、「記者の安全を守るという理由なら、なぜ中央テレビを許可したの か、不公平ではないか」との抗議が外国メディアから殺到した。統制の網の目を抜けた情報の流出は、海外メディアを中心とした国際世論をすでに動かしてい る。

そう言えば、ネット上に流出している殺された僧侶たちの画像の中には、解像度の粗い、いかにも携帯電話のカメラの画像が含まれていた。おそらく現地のチベット人たちが、亡命政府やNGOの知人などを通して送ってきたものだろう。

前に記事で、特定政党の新聞よりも、一般の人達のほうが真実を早く知ってしまう時代がやってきていると書いたが、別に政党新聞に限らず一般のメディアや政府側が流す情報に対しても、それは言えていると思う。もちろんそこには玉石混淆の状態があるので、見る側もそこから真実を選ぶ目を持たないといけない。それでもいろんな情報が流されることは、我々に自分の頭で考えさせることを要求するはずだ。

朝日などの大手のメディアも、大衆から逆に発言を監視される時代になってきているのかもしれない。

[たとえばこの痛い例]

歴史的な経過も考えずに「近代化」という言葉に安直に飛びつく向きには嫌気もさすが...。

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しかしそれはそうとして、News ZERO に映っていた携帯を嬉しそうに使う若いチベット僧。

チベット人が携帯で現場のニュースを送ってきていると聞くと、僕の中で、彼
らの姿の意味が急に違う色合いを帯びてきてしまった。

中国の神話には渾沌」という妖怪が出てくるらしい。混沌は「いつも自分の尻尾を咥えてグルグル回っているだけで前に進むことは無く」「善人を忌み嫌い、悪人に媚びる」

まるで中国を比喩するようなすぐれたシニシズム。この混沌はものが見えるようになると死ぬ運命にある。

「渾沌の顔に七孔をあけたところ、渾沌は死んでしまった」

あるTV番組でこの混沌の喩えを使っていた。過去に政治的な批判の中でオリンピックを開催した国は、開催後10年前後に滅亡しているという話だ(ベルリン、モスクワ)。

僕には携帯で闘うチベット僧たちが、中国という「混沌」に目鼻を付けようとしているように思えてきた。

Tibflag

そうなんだ!彼らはそうして戦っているんだ。

なんだかインターネットとカメラ付携帯を発明した人に感謝である。

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(追記)

実際チベットの人達に携帯電話やインターネットがどれほど普及しているのか、普及しているとすればどんなふうに使われているのか、といったことを知っている方のサイトをさがしてみた。

2つほどきれいな写真入りのサイトを見付けた。この中で携帯などの充電をどうやっているかが紹介されており、やや驚きつつ納得。

しかし、これら現地を知っている方々が言及されているように、このチベットの携帯電話やネットのインフラを整備したのは、他でもない中国人なのである。核エネルギーのような大きなものを持ち出さなくても、文明の概念として事情は似ている。文明とは、道具にもなり武器にもなる。敵にもなり味方にもなる、そんな不思議な存在なんだなーとあらためて思う。

 



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