J・G・バラードが末期前立腺癌
自分を取り巻く世界が、人智を超えた圧倒的な力を持っているということを、理屈ではなく感じとる感覚。そしてだからこそ世界は美しいのだと思える感性。そう いう感性を子どもの頃は誰しも多かれ少なかれもっているものだと思っている。ただその感性は、大人になって合理的な実利本位の生活に浸っているうちに消えさってしま う。でも彼の作品を読めば、時々はそんな鋭利な感覚がふと甦るのを感じた。
昨日アーサー・C・クラークが亡くなったというニュースを書いたが、同じくSF界の巨匠の悲しいニュースを知ってしまった。
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J・G・バラードが、サンデー・タイムズとのインタビューの中で、
末期前立腺癌と診断されたことを公表。
3月の始めのニュースで、見付けるのが遅いが、なかなかこういうのは毎日意識してないと知りにくいよな。最近は創元推理文庫の名作も、出版不況の煽りから か、大規模書店ですら昔のように彼の著作がずらっと並んでいるのを見なくなった。でも高校時代から愛読してきた彼の傑作群.....「結晶世界」「時の 声」などなど、最近読んだところでは「コカイン・ナイト」。もはやSF作家というより、20世紀の巨匠となった。
はじめて「時の声」を読んだ時、体に走った震撼。そんな作家はめったにないものだ。「コカイン・ナイト」では、善悪の境界線が日常のなにげない場面で融け合い、まるでボルヘスの短篇のように終端が始まりとクロスする。永劫回帰。
はるか天空には墜落する衛星。それを見上げる者には死の予感。結晶化する身体。森林と融合する性。永遠に外縁に辿り着けぬ大建築都市...。そして我々が知っているよりも数倍の速さで追いかけてくる昼夜の境界線。追いつかれて夜の側に数時間居れば、やはり死が待っている。
彼は我々の脳に巣食う固定的な価値観を、いつも根底からゆさぶり、流動化させてくれた。「世界の破滅」というキーワードで。
いつかは彼の追悼記事を見るのだろう。
僕がもっとも敬愛する作家。
言わずと知れた「太陽の帝国」のあの少年ジェイミーのことだ。
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