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2008-04-04

今日の「しんぶん」

朝からダラダラとテレビを見ていたら、うちの息子がこう言ってきた。
「お父さん、チベットのことばっかり調べるのもいいけど、韓国もたいへんやで!」

『北朝鮮が「南北対話の中断」を宣言 軍事的対応措置も』(産経ニュース)

おわっ!あわや第二次朝鮮戦争勃発か?なんて先走ったこと言っちゃいけない。こちらも大変そうだが、何か書くべきことが生まれた時点でとりあげよう...。まあいずれにしろ軍事的対応はよくないぞ、何ごとも"対話"でねとブツクサ言っていた、

とそのとき、手元に届いた例の「しんぶん」を広げて、「ん?」

チベット問題——対話による平和的解決を 志位委員長が胡錦濤主席に書簡

「書簡」? これが?  (spa)

昔の「赤旗」はもっと長くて難しい論文が載ってて、それが苦痛であり同時に興味でもあった。その頃のソ連とかにあてた「書簡」は、もっと詳しくて論調が明確でカッコよかったけどな〜。「書簡」も今の若者の読書ばなれに気を使ってるんかな〜 (rain)。

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さて、今日のこの「しんぶん」に載った書簡について、実はあまりしゃべりたくない気分なのだが、やっとこさ一面にチベット問題についての党の見解がのったのであるし、何か言っておこう。

いまだに「暴動」という表現を使っているのもひっかかるが、書簡を出したこと、初めて正式に党の見解にあたる文面を出したこと、そこはまあとにかく評価はしましょう。あんましいじめちゃかわいそうだしネ。

それにしても、なっがいことかかるよな〜。まあしかたないか。「公党」だからな。5月の胡錦濤主席の来日を考えると、いろいろ配慮の結果のタイミングとも言えるかな。

ただ、一定の評価はしますが......、

  1. 中国政府と「ダライ・ラマ側」との対話を望むという言い方は、一見普通に見えるけど、双方ともに問題があるから話し合ってくれというニュアンスにも聞こえます。そこにすでに微妙な問題を感じるが。そもそもダライ・ラマは、今まで中国側にどれだけ譲歩して、何度対話の努力をしてきたことか。そういう経過もふまえた文章でないと、なんだかな〜。
    結局中国のチベット侵略という歴史に踏み込まないため、チベット人の怒りの根源についての配慮が感じられない。
    (ひょっとしてこの書簡は、中国に読ませる視点だけで書かれたもので、日本向けに発表するつもりはなかったとか....。)
  2. 話し合いといっても相手が中国だと、自身に都合のよいいろんな条件を前提にすることは目に見えているから、「対等な話し合い」とするためにどういう考えが必要かをもっと語るべき。そもそも中国がまともに話し合う国だとも思えんし。
  3. さらに「ダライ・ラマ側」と言うけど、チベット住民が全てダライ派なわけではないと思う。心の中でダライを師と仰いでいる人でも、ダライの考えている「高度な自治」とは微妙に気持ちのニュアンスが違う人達がたくさん居ると聞いている。何の説明もなく、ダライラマがチベット側代表としてテーブルにつくことがまず必要と言うだけでは、その方法に微妙な失望を感じている人達の存在が見落とされる。
    まあただ本当にダライと話し合うことができるなら、重要な一歩になるわけだから、「ダライ・ラマ側の代表との対話による平和的解決」と言うこと自体は問題ないだろう。ここは欲を言えばという意味で、「ダライ・ラマ側の代表との対話をきっかけとして、独立を望む人々も含めた全チベット人との和平を」とかいったニュアンスが欲しかった。
  4. それと「オリンピックをこの問題に関連づけ、政治的に利用することは、『スポーツの祭典』であるオリンピックの精神とは相いれないものであり、賛成できないということが、わが党の立場である」という言い方は、「平和の祭典だからこそ、開催国に平和と人権を!」という抗議する側の行為を、ルール違反的な「政治的利用」とみなしている感じがして、すごく印象悪い。申し訳ないが、この一文でつい超党派の議員連盟「北京オリンピックを支援する議員の会」の顧問などに、志位氏以下数名の共産党幹部が名を連ねていることを思い出してしまった。オリンピックを理由にして、チベット問題への批判をかわせるとしたら、そこで利するのは誰か? オリンピックを「政治的利用」しているのは、ほんとうは誰なのか?
  5. そして一番まずいのは何と言っても、「チベットは中国の一部であるという立場で」と言っちゃったことでしょう。完全に中国側が考える領土権を既成事実として認めた物言いになってます。これはもう取り返しがつかない。今までの「赤旗」の報道の仕方の平べったさが、世間では「中国擁護なの?」と疑問もたれてるのに、その疑問にやっぱりそうじゃんと自ら確信与えてしまった。

まあこの書簡は読んでみても、少し前に福田首相あたりが「騒乱の拡大に憂慮し、話し合いによる解決を」と言ってた凡庸な内容とさほど変わらない。内容は変わらないが、それを日本共産党が言ったという点で別の意味が生まれてしまう。つまり共産党にはもっとふみこんだきっぱりとした態度を期待してた支持者にとっての失望感があるのではないか。これじゃやっぱ何も言わなかったほうがましでは? と思っていたところ、ネットを漁るとさっそく意見がちらほらと。

例えばこのサイト。個人的には、他の記事では意見が違うなーと思うこともあるんですが、今回はすでにこうおっしゃってます。

世界の片隅でニュースを読む:「チベット問題に関する志位書簡について」

ほぼ僕の感じることと共通です。この方は普段わりと共産党支持のような感じでしゃべってくれてたように思うんですが...。せっかくの支持者の気持ちがこうして冷めていくんでしょうか?

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組織を人間にたとえると、組織の「無意識」といったものもありえるのかな? 構成員の、特に幹部をはじめとした指導機関=中枢の人々が抱える「集団幻想」みたいな。

岸田秀の言い方をかりれば、「無意識とは、自己が、それを自分の一部であるとはけっして認めることができないにも関わらず、まぎれもなく自己の一部であるような自己意識」ってことになる。

フロイトが書いたように「つい言っちゃった」というような言動はこの「無意識」と関係があるとか。もう一度言いますが「チベットは中国の一部であるという立場で」となぜ言っちゃったんでしょう?

僕なんかが常日頃問題にしているのは、この日本共産党という組織の「無意識」なんですがねー。視野狭窄の党員の方は、なかなかその視点がわかってくれません(coldsweats01)。

 

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コメント

 はじめまして。ご紹介及びTB恐れ入ります。
 貴ブログのチベット問題に関する記事を読みましたが、冷静な分析で勉強になりました。「他の記事で意見が違うなー」と私も思いますが、不思議と不快感はありません。

>この方は普段わりと共産党支持のような感じ
 「貧困と格差」を是正するためには、共産党が伸長するのが最も手っ取り早いから「支持」しているというところです。社会主義の理論的な話はさっぱりですし、近代天皇制とか日本資本主義の性格規定など歴史認識では実証史学の立場から共産党の公式理論を否定しているくらいで、実は期間限定のエセ共産党シンパ(?)です。

こちらこそはじめまして。
「世界の片隅で...」をたまに読ませて頂いております。

「エセ共産党シンパ」でもぜんぜん何の問題もないと思います。
熱烈な党員であった(過去形)にも関わらず、党批判している私こそ「エセ共産党シンパ」かもしれません。だって選挙では毎回支持してるし...。
むしろ「期間限定」の支持者と"一致したところで共闘する"ことができない、組織の柔軟性のなさのほうが問題だと思ってます。

だって、上の人ほど頭のカタイ党員が多いんだも〜ん(笑)。

はじめまして、匿名希望と申します。
# そして一番まずいのは何と言っても、「チベットは中国の一部であるという立場で」と言っちゃったことでしょう。完全に中国側が考える領土権を既成事実として認めた物言いになってます。これはもう取り返しがつかない。

そうとも言い切れないのでは?
こちらの「北京放送BBS」のリンクに辛亥革命以降のチベットについての議論が書かれていますが、これを見る限りチベットは余り独立する意欲が無かったように見えます。
http://jpbbs.cri.cn/viewtopic.php?t=5743&postdays=0&postorder=asc&start=0&sid=9f69f1d61c694b632a379c47fc3aef4e
あと、グルンフェルドの「現代チベットの歩み」(東方書店)もご覧になることをお勧めします。

匿名希望さまへ

清朝によるチベット領有が、その後の中華民国や現在の中国共産党によるチベット領有の正統性を与えるものかどうかという問題は、国際法などに照らしてどうかという議論もあろうかと思いますが、そのへんにはまると学術的な議論の枠からぬけだせないかと。学術的な論点には政治的立場が隠されているので、なおさら見えにくい詭弁に流されることもありえます。

私がここで言いたいのは、一応社会主義を標榜する政党が、同じく社会主義を標榜する国家に出した書簡で、他民族による別民族の領土の併合を、簡単に現状ありきな言い方をしてよいのかということです。もちろんそれは日本共産党もチベット独立を要求しろとかいった、短絡したことを求めているわけではありません。公党にそんな軽率な発言が許されるわけでもなく、ダライラマは独立を求めていないわけだし。一番言いたいのは、民族自決権をめぐる社会主義理論の問題であり、日本共産党のイメージが悪くなるのでは? ということです。

また、私個人は中国に領有される前のチベット人自身に十分な人権意識があったなどとは少しも思いません。政宗一致の矛盾と悲惨な農奴制度の国であったという説もあります。ただしこれはあくまで中国側の主張で、そもそも遊牧中心であったチベットに、農奴制があったのかとも言われています。チベット人の独立心=民族国家意識は、欧米の中国侵略の中で目覚めたとする説も、そうだろうと思えます。その意味では、確かにかつてのチベットは「余り独立する意欲が無かった」という捉え方もできます。
ただ民族運動とはみんなそういうものではないでしょうか。民族意識が欧米の侵略の中で目覚めたというのは、中国人も同じです。また、独立心が弱かったから現状に甘んじろというのもおかしな話です。甘んじれるような現状ではないし。

さらに、悲惨で封建的な国であったから、中国による近代化が必要であったとする考え方が通るなら、かつての社会主義国による他国の侵略は全て許されてしまいます。また中国の進める近代化そのものに矛盾があることは、当の中国自身にあらわれています。
結局「今のチベットが幸せかどうか」は、チベット住民が決めることであって、中国が決めることではないと考えます。また「チベットが中国の一部」かどうかも、チベット住民が決めることであって、日本の共産党にどうこう言う権利はないと考えます。

それと「北京放送BBS」は参考にはなりますが、検閲が入っています。全ての発言者の意見がそのまま掲示されているかどうかも、発言者がどういう背景の人物かもわかりません。

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