『原発・正力・CIA』 有馬 哲夫(著)
- 『原発・正力・CIA—機密文書で読む昭和裏面史』 有馬 哲夫(著) (新潮新書 249)
きっと叱られるだろうが、日本全国にた〜くさん居るだろうディズニーファンの方に申し訳ない。
しかも子どもの頃から嫌いだった。一般の感覚からすればかなり変わった子どもってことになる。奴にはなんかこう胡散臭い感じがするんである。
子どもの頃、白黒TVで見たミッキーは、さすがにトーキー時代のしょぼい絵じゃなかったが、それでも現在のすっかりソフィスティケイト?されたのとは違って、ちょっとイジワルな感じのミッキーだった。その影響もあるかと。
うちの奥さん「何言ってんのよ!ミッキー嫌いでも、ディズニーものけっこう見てるじゃないの。「海底二万哩」みたいな古い冒険映画が大好きとか「ファンタジア最高!」って言ってたのどこの誰よ!」
僕「...ちょっと、黙っててくんない!
」
うちの奥さん「でもあんたがハマってた『パイレーツ・オブ・カリビアン』だって、『ナルニア国物語』だって、みーんなディズニー映画なのよ! ....ちょっと何すんのよ! うぐ、むむむ...、やめて〜〜!!!
」
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TVではたまに物知り顔の評論家が「企業の消費者心理をついたマーケティング戦略」みたいな、大衆心理論を語ってますが、正直そんなこと意識もしないし、どうでもいいですよね。消費者にとっては、 きっかけが何であっても買った商品が便利で信用できればそれで よく、企業のマーケティング戦略の裏にどんなイデオロギーが隠れていようが、特に関係ないでしょう。
ところがこの本を読むと、企業と消費者、はたまたその背後の国家との関係が、はたしてそれほど簡単に割り切れるものかと考えさせられます。
内容は、2005年に公開されたアメリカ国立第二公文書館のCIA文書に基づいた調査が基本。読売新聞社主であり、後に衆議院議員になった正力松太郎が、原発を推進した経緯と、その際のCIAの思惑や動き についての詳細がこの物語の主軸です。正力の総理大臣への夢、電波戦略(マイクロ波通信網)構想、その後の原子力利用宣伝を進め るCIAの画策に、正力がつかずはなれずの腹の探り合いを繰り返してきたことが、ことこまかに暴露されています。日本の財界人とアメリカ政府との互いの支配 欲からくるかけひき。なかなか面白く読ませてもらいました。
CIAがアメリカの世界戦略のために、中南米など他所の国の水面下であれこれ悪さしてきた話は(勝手に作られた話 も含めて)よく聞きます。しかしこの本に出てくるのは日本の話。根本に戦後の冷戦構造があって、日本の親米化がどうしても必要で あったという理由はわかるが、日本での行動をここまで具体的に書かれるとちょっと引く。
戦後アメリカは、核爆弾の開発と並行して、友好国への原子力発電の利用をすすめる。その中でアメリカ主導のヘゲモニーを作ろうとした。そのためにはどうしても、原子力が人類にとって役立つという「良いイメージ」を定着させる必要があったということでしょう。よりによって原爆を落とされた日本で核の好イメージを広めるとは、非常に困難な作業であったと同時に、アメリカとは何と無神経な国か。
原子力利用に関しては、アイゼンハワー大統領の"Atoms for peace"(第470回国連総会)という演説が有名。現在の「国際原子力機関」 はこの演説がきっかけになって設立されたものだそうで、これ一つとっても、戦後の国際的な原子力利用の動きがアメリカの主導下で作られていったものだと分かります。原子力利用に限らないけど、軍事技術と民間技術は表裏一体で、平和利用の技術の基盤は軍事的利用の技術力に依存していた。つまり原子力開発の主導権を握れないことが共産圏への屈伏を意味した時代、ソ連に先を越されまいとアメリカは必死だったわけです。
原発開発企業として名を上げた「GE」「ウェスチングハウス」などの企業が、米政府と一体となってこの戦略に関わっていきますが、これらの企業はそもそ も原子力潜水艦に搭載された核エンジンの関連メーカーであり、アメリカの産軍共同体が背後にある。このあたり、現在のイラク戦争とアメリカの石油戦略、 そこで出てくるハリバートン社の話などと構図としてはよく似ているように思いました。
このアメリカの世界戦略において、日本は特に神経質に扱われたらしい。被爆国なので...。
アメリカの原子力戦略は非常に矛盾の多いもので、結局は今日の北朝鮮やリビアの問題にもつながります。戦勝国と なったトル コ、イラン、イラク、インド、パキスタン、フィリピンに対しては、アメリカは原子炉建設などの技術供与にわりと積極的であっ た。現在これらの被援助国のいくつかが核保有国になっていますが、今になってふりかえると、アメリカにとっては非常に皮肉な話です(P41)。
一方敗戦国の日本やドイツに原子力技術を供与することは、当然慎重であったと。ましてや日本は唯一の被爆国であり国民の核アレルギーは他国よりずっと強い。さらに1954年におきた第五福竜丸事件によって、反米・反核の運動が起こったことが、アメリカにとって相当悩ましい問題であったことがわかります。この背景が、心理作戦において正力という存在をCIAが必要とした根底にあると読めました。
日本側で原子力の利用を進めた正力側はどうだったか。この本を読む限りは、総理大臣の夢をつかんで日本の政治を主導してやろうという個人的野心のために、原子力発電に取り組んでいただけのように 見えます。自然環境や人体への影響を十分考慮しなければならない原子力発電であったにも関わらず、CIAとのかけひきと政争の中で、正力はあまり深く考えもせずに事を進めていったようです。原発予定地を簡単に東海村に決めていったくだりや、イギリ スから事故の際の免責条項を指摘されてはじめて、原発の危険性について気付いたあたり、近代的な科学の力に酔いしれ、止まるわけにはいかなくなっていた正力の迷妄を感じます。
政争と外国とのかけひきは政治の背景にいつもある要素。原発もこのかけひきの道具でしかなかった。日本の原発開発は、反共保守であった正力と、保守派内部の政敵、そこにCIAの思惑がたまたま重なりあって始められたものだったということでしょう。
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こ の本を読んでもう一つ驚いたのは、大衆消費社会に住む我々の嗜好が、アメリカという国の戦略の中で、実に意図的に操作されている事実。企業の マーケティング戦略の裏の意図など消費者にとって関係ないが、実は、消費者が意識しないで特定の 価値観を受け入れてしまうよう、大衆の嗜好はコントロールされているのだろうか。
この本に出てくる「原子力平和利用博覧会」もその例。CIAなどは、自分たちがそういう大衆心理操作の背後にいることを知られないよう、徹底的に気を使っている。CIAだからそれは当然だが、表向きのアメリカ政府筋もまた、背後にある国家間の政治的契約を隠すことに神経質。何々博覧会なるものに政治的意図があっても、見た目は楽しいデパートかどっかのイベントのように見せかけておいて、大衆に受け入れやすく作られている。「大衆から警戒されないこと」これが肝心であって、だからこそ正力のような民間人が利用されるのでしょう。CIAにとっては、正力が読売新聞社主であるからこそ都合がよいのであって、彼が総理大臣になっては逆に使いずらい。そのへんを正力側がもひとつ分かっていなかったかのような構図が面白かった。
「原子力平和利用博覧会」のアメリカ側の責任者であった合衆国情報局次長ウォッシュバーンという男は、戦前アメリカ軍が作った「心理戦局」の出身で、ディズニ−を心理戦略に利用しようと考え付いたのもこの男。この「心理戦局」とそこから生まれた「ラジオ自由ヨーロッパ」という共産陣営に対抗するための謀略「民間」放送局が、今日のVOA(ボイス・オブ・アメリカ)に連綿とつながっているそうです。
今日私達に夢を与えてくれる映画会社ディズニーですが、当時『Our friend the atom (わが友原子力)』というプロパガンダ映画を製作して、アメリカの原子力売り込みに協力しました。その際親しみやすいミッキーのイメージは、日本人の核アレルギー除去に多大な効果をもたらしたのでしょう。そしてこの時できた正力とディズニーとの関係が、その後の東京ディズニーランド建設にまっすぐつながっていくのです。この本ではじめて知ったのですが、冒頭でうちの嫁がほざいていたディズニ−映画「海底二万哩」に出てくる潜水艦「ノーチラス号」は、アメリカが誇る世界初の原子力潜水艦の名前でもあり、「わが友原子力」にも出てきます。
そもそもウォルト・ディズニーという人は、かなりの保守的思想の持ち主であったようです。ディズニーという会社自体、他の国の多くのメジャーな映画会社と同様に、戦争協力の国策映画を多数作っています。ウォルト・ディズニー - Wikipedia によれば、これら国策映画にはミッキーマウスが戦闘機で零戦を撃墜するシーンもあったらしい(クソッ!!)。(参考:D.B.E遊撃隊 本家・ウォルトおじさんのガスマスク)
以前あるエントリで書いたように、戦 後の高度成長は、国民生活の「豊かさ」という右派も左派も反論しにくい美徳によって、自分ではものごとをよく考えない 群衆を大量につくり出した、とする日高六郎さんのような意見もあります。便利でよければいいじゃないかと思う日常の視点からは、そういう学者の論点はおお げさに聞こえるのですが、この本で少し見せられた日本の大衆文化の背景にある事実は、案外学者の言い方もあたっているなと感じさせます。ディズニーはまさに、アメリカナイズされ飼い慣らされた戦後日本の豊かさと平和の象徴なのでしょう。
我々の日常ではあたりまえになったアメリカ企業、古参のマクドやコカコーラから、近頃地方都市でも見かけるスタバとか、日本人の生活に浸透したアメリカ型生活を拒否するのは難しい(むりに拒否する理由も見当たらないし)。日本人自体がアメリカ社会にとけこんで行くことも、ある種の日米共同意識を一般人につくり出すには役立つでしょう。ロシア系の世界で活躍した日本人など、指揮者の西本智実ぐらいしか思い付かないが、アメリカで活躍する日本人は誰もが知るように圧倒的に多い。日本人メジャーリーガーの活躍は言うに及ばず、例えばここ数年スペースシャトルの日本人宇宙飛行士が続いていることなど、日本人のアメリカに対するイメージ向上に多いに役立っていることだと想像できます。ほんの60数年前までは「鬼畜米英」と言っていたのに、あらためて気付くと、とても不思議なことです。
イラクに侵攻し石油利権を手に入れるアメリカ、温暖化防止に抵抗するアメリカ、問題あり牛肉を押しつけてくるアメリカ。私達の生活の中に浸透する大衆文化は、これら醜い政治とは一見何の関係もないようですが、はたして何の意図も隠さずに輸入されているものなのか?
判断するには私達の頭や感性しかない。やっぱりマイケル・ムーアでも見て目をさまそうかな....。
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僕「そら見たことか!! オレは正しかった! やっぱりミッキーマウスはアメリカ帝国主義のスパイだったんだ! おのれミッキーマウス、今度会ったらおまえのその丸い耳にオレがピストルで風穴あけてやるからな!!」
うちの奥さん「あんた!! なにわけわかんないこと、うだうだ言ってんのよ! そんなことよりあんたのミッキー嫌いのせいで、うちは一回も東京ディズニ−ランドに行ってないのヨ! 会社の若い子から『今どき珍しいですねー』なんて笑われたんだからネ!」
息子「おれは、別に行かなくてもいいけど〜」
うちの奥さん「ほら! 変なだんなのせいで子どもまで可愛げがないんだから! だいたいネ、私が行きたいのヨ、私が!」
息子「まあそうギャーギャー言わずに仲良くしてくれろ。お母さんもUSJで妥協しろよ。」
うちの奥さん「だめよ! USJじゃ近くて値打ちが無いじゃないの。そもそもあんた、体制側のイデオロギーがどうとか小難しいへ理屈並べて、そんな理屈で楽しいものも楽しめないんじゃ、まるで古参の共産党員みたいじゃないの!!」
僕「うぅ、.........。」
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(追記) > 古参の共産党員....
笑い話ですが、今は年とった日本共産党員の方には、若かった頃、持ち家を買った同志に「裏切者め! おまえはブルジョアに転落する気か!!」なんてマジで言ってる人がいました
。
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