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2008-05-06

MicrosoftのYahoo買収提案撤回、これって喜々的展開!

世間が聖火リレーやらで盛り上がってる(?)頃、PC関係のネットウォッチャーの間には、MicrosoftのYahoo買収提案撤回というニュースが流れてきた。あまり目立たない扱いだが、けっこう重要なニュースだと思う。

Gates 個人的にはMicrosoft(MS)という企業が好きではない。MSはどちらかと言えば、ハリバートンのような会社だと思う。自身の有利になるよう政界に働きかけ、自由主義を標榜しながらその実独占を願っている。市場原理に従うふりをしながら、国家が自企業に有利な規制を敷いてくれることを望んでいる。全ての企業がそうだと言ってしまうと身も蓋もないが、とくにMSのやりかたは好きになれない。


「え!何でYahoo買わないですか?!」

 

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ここ10年のMSは、しだいしだいに追い詰められてきた状態だった。日本では独禁法違反などとあまりさわぎたて ないが、一応MSが勝ったことになっている反トラスト法訴訟にしても、欧州連合が、EU競争法違反で制裁金を科した事件にしても、商売のやりかたが汚い MSへの批判の風は止まらなかった。こうした世界的な批判に対して、MSが徐々に譲歩・妥協をせざるえなかったことは、Microsoft Windows Services for UNIX (UNIX環境とWindows環境との相互運用を円滑にするソフトウェア)を発表したり、OSのソースコードの一部を公開したりするようになったことに 表れている。

パソコンを買えばOSとしてはWindowsが付いているのが当り前の世の中、一般のPCユーザの多くは、OSが交換可能なソフトだとかあまり考え たこともなく、XPとかVistaだとかを受け入れてきた。そもそもハードを売るメーカーに、MSのOSだけを乗せるように契約やらライセンスを押しつけ ること自体が独禁法違反だと思うんだが、便利であればいいという感覚と、OSをインストールする行為のハードルの高さが功を奏して、MS帝国は世界を支配 した。

しかしここ10年ぐらいのなかでいろんな変化があって、その台風の目になってきたのが、オープンソース運動あるいはフリーソフト運動*であったことは言うまでもない。リチャード・ストールマンリーナス・トーバルズといった天才を中心にして、年々その輪は大きく成長している。MySQLなどもけっこうこの点では貢献しているんだろう。
(* 後のストールマンの講演を読むと、オープンソース運動とフリーソフト運動は厳密にはおなじものではないが、ここではMSとの対抗軸という意味で、ごっちゃにしてしゃべってしまう)

Open Officeは、Microsoft Office に置き換わるものとして、年々その完成度を上げてきている。選択肢が増えるということは、企業どうしの競争あってのことで、ユーザにとっての恩恵は大きい に違いない。数年前にタイで、Windows XP HomeとOffice標準版の廉価版を出すという出来事があった。

この背景でもLinuxなどのフリーなソフトの存在が大きい。(この時の廉価版を勝手に輸入して日本で売ればボロ儲けといいたいところだが、そうできないように規制しているのもMSである)

先進国のPC市場は頭打ちなので、MSにすれば後進国に切込みたいところだが、この世界にまでフリーな運動の影響が及んできている。大きな市場であ る中国は、世界一のバッタもん生産国だから、プロテクトのかかったソフトをおとなしく使うはずもない。もはやIT先進国となったインドに至っては、航空機 の飛行シミュレーション・システムを独自開発するぐらいの技術力。OSの自主開発もやるだろう。そもそもオープンソースな運動の優秀なエンジニアには、も とからインド人がたくさんいて、彼らの最優秀層はMITというオープンソースの肥沃な大地の洗礼を受けてから業界に入る(ストールマンはアメリカ人だがMITの出身)。MSの社員になったところで、MS思想への帰属心など薄いだろう。第一MSとはよく対立関係にあるサン・マイクロシステムズ社の共同設立者の一人ビノッド・コースラはインド人。

もはやオープンソース運動やGoogleなどのMS陣営ではない技術革新を無視して、MSはやっていけなくなった。また、Web2.0的なビジネス モデルの分野でも、MSは Amazon や Apple に水をあけられた。今回のYahooの買収騒動は、MSがネット市場分野で出遅れていることへの焦りのあらわれだったのではないだろうか。

フリーソフトと言えば、日本のまつもとゆきひろさんが生んだ言語である Ruby も、誕生後10数年経て、Web2.0な世界で非常な注目を浴びている。Ruby on Rails のような環境が、業務分野で用いられ始めているのが、Ruby への注目を後押しする。開発サイドでもMS以外の選択肢がどんどん増えてきているわけだ。しかも、これらの動きは、OSとしてのWindowsを、けっし て排除せず、Windowsでも動く環境であることに強みがある。

Ajaxに始まったJavaScriptスクリプティングの分野でも、もともとセキュリティーの観点からローカルな資源にアクセスできなかったJavaScriptの限界をうち崩す、Google Gears のような技術が注目されている。こういう技術はローカルなアプリケーションとWEBアプリケーションとの境界を少なくしていく。ブラウザに追加するプラグインなどで、サーバサイドのアプリと共同してローカルなソフトウェアを動作させる。昔のハコ入りソフトとは違うのである。この技術はGoogleのようなネット側を制した企業が、ローカルアプリの分野でも有利な立場に立てることを意味する。また同時にそのソフトを提供するベンダが、優秀なネットワーク(コンピュータ・クラウド)を提供することを要請する(下記ITProの記事が参考になる)。やはりネットを制するものが業界を制する。Yahooの買収に動いたMSは、このことをよく分かっているわけだ。

この分野でMSも Silverlight という素晴らしい技術を出しているが、もはやMSの企業利益のためだけの技術として売り出していくものではない。.NETもそれは同じで、Monoプロ ジェクトのような取り組みが、MSの技術そのものをオープンなものへと変えていく。業界のオープンな流れを無視してMSが新技術を開発していくことは、も はやできなくなってきていると言えるだろう。(ITPro:Linuxでも .NETがここまで動く@IT:特集 Linuxで動く.NET環境「Mono 1.0」の実力)

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さて、MSがYahoo買収を断念したことで、Yahoo株が大きく下がるとの噂があったが、たいしたこともなかったようだ。今回の買収劇で面白 かったのは、MSに対抗して、Yahoo が Googleと連携したことだ。Yahooはもうかなり前に、独自の検索エンジンを開発し、Googleへの依存から離れた。しかし今回この区切りを一時 的に取り払って、2週間の期間限定で Yahoo の検索結果ページにGoogleのキーワード広告を掲載する実験を行ったのだ。MSの CEO Steve Ballmerは批判しているが、毒をもって毒を制するような形になったのが、実に面白い。

今回の買収劇を報じたニュースの中で、興味を引いたものはこれ。

MSの持つ技術は素晴らしいものがある。それにMSの帝国は巨大なので、そう簡単に崩れるわけもない。しかし、もはやMSが自身のぜい肉を肥やすためだけに、業界にコミットしていくことは不可能だ。MS自身が競争の中で健全に生きる一企業になれば、僕は何の不満もない。

もうビル・ゲイツの顔にパイを投げる必要はない。お年であるし、かわいそうだ。
そんなひまがあったら、Emacs や Eclipse に向かおう。

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(追記)

フリーソフトウェア財団の総司令官、ストールマンが講演のため来日した際のインタビューがある。MSとは対極の思想が聞ける。フリーソフトウェア運動に帰依しましょうheart01
はじめて彼を見る人はお気をつけください。見ためはすごいですが、アサ○ラ尊師ではありませんw

この対談の中で聞いている音楽のことを尋ねられ、「ビルマ?それともミャンマーですか?」との質問にこう答えているのがいいな。

「いや違うよ。アウン・サン・スーチーが呼んでいる「ビルマ」だよ。われわれは自由のために戦う人を誰でも応援するからね。」

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