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2008-06-28

チベット史の捏造

少し前にあるコメンターの方から、検閲されていることで有名な「北京放送BBS」での、チベット領有の歴史に関する議論を参考にせよとご忠告をいただいた。

それについて私は、「清朝によるチベット領有が、その後の中華民国や現在の中国共産党によるチベット領有の正統性を与えるものかどうかという問題は、国際法などに照らしてどうかという議論もあろうかと思いますが、そのへんにはまると学術的な議論の枠からぬけだせないかと。学術的な論点には政治的立場が隠されているので、なおさら見えにくい詭弁に流されることもありえます。」と応えておいた。

清朝時代から中華民国時代にかけてよく言われる中国の対チベット宗主権は、イギリスとの間に一時的に交わされた書類上のものであって、そのイギリス自身が当時チベットを独立国として承認していた[1914年シム ラ条約(P36)]。

その他様々な歴史的経緯を考えても、チベットがここまで侵略され略奪されてきたのは中国共産党の台頭以降である。だからこの中国共産党の歴史とチベット問題を切り離すことはできない。またその意味で、チベット問題をはじめ、その隣のウイグル民族など周辺民族への中共の態度は、ソ連東欧崩壊後の社会主義をめぐる最大の問題の一つではないか。

この数カ月のネットでのいろんな議論。左翼の中には「チベット問題は中国の内政問題」「チベットは過去一度も独立国家ではなかった」などの意見が見られた。そういう意見に対し、先に書評した『中国が隠し続けるチベットの真実』では、著者が歴史を正しく把握することを重視する。かつてインドや元朝とも対等につき合ったチベット。新疆ウイグ ル、 内モンゴル、そしてこのチベットを除けば、中国固有の領土は現在の4割に満たないとある(P31)。

1950年に中国が侵略するまで、チベットには独自の通貨があり、自分達で国を治めていた。歴史上チベットを支配したとされる元はもちろんモンゴル民族であり、同じくチベットを領有したとされる清もモンゴル系の満州人である。純粋な中国人はかつてチベットを支配できなかった。

かつてのチベット人にも残虐な歴史がある。ペマ・ギャルポの本にも19世紀に生きた曾祖父の残虐な行為について語ってい る(P60)。しかしそれはアメリカ・インディアンもそうであったし、西洋人も、かつての日本人もそうであった。

「先進国」が植民地の過去の「文化的遅れ」を自分たちの占領の正当化に使うことは、どこの国にも見られる現象ではある。ただ、特に中共はずっと長い間、こうした「後進性」をプロパガンダに利用しようとしてきた。近代以前のチベット社会の後進性をもって、共産党侵攻を正統化するのである。

しかし、古典的な部族豪族の対立・戦闘と近代国家の侵略を並列比較するのはおかしい。これは例えてみれば明らかで、日本はかつて残忍な武士の国であったから、他国に支配されたほうが幸せだという論理に、納得する日本人が居るのだろうか?

この手の詭弁は今も続いている。少し前に北京で「チベットの歴史」をテーマとする展覧会が行なわれていたそうだ。それはチベットの近代化は中国共産党のおかげであるとした、完全に中国政府の側に偏った捏造史=「反チベット独立」を目的とした捏造キャンペーンにすぎなかった。

「現在を支配する者は未来を支配するだけでなく、過去をも変えることができる」オーウェルの警告が思い出される。

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