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2008-06-28

『中国が隠し続けるチベットの真実』

Pemabook『僧侶の一人が中国人に止めるよう哀願したところ、肘から先の腕を切り落とされた。中国人は彼に「仏がいるなら、失われた腕を元に戻してくれるはずだ」と言った』

最近のラサでの聖火リレーのニュースでも分かるように、日本の公式なニュースで見られる中国の写真画像のほとんどは、中国政府から配信されたものだ。以前このブログでも引用した、BBCから流れた3月14日の事件を報じる写真。右上に登場する「刀を持ったチベット人」についても、すでに"粗暴なチベット人"のイメージを演出しようとの、中国側の捏造疑惑があるそうだ。あらかじめ画像を捏造した上で数日後に騒ぎ立てるというこの計画性が、"チベットの蜂起より前から"考えられていたものではないかという。

ただ、こういう中国側の問題ばかり見ていると足元をすくわれる。ネットがあたりまえになった今の時代が昔と違うのは、中国政府の意のままにならない映像も流れてしまうことだろう。中国側が捏造した情報と、中国をおとしめようとする側の情報が交錯していくので、その発信源や真の意図を掴まなければ事実を知るのは難しい。ここで紹介する本でも、この問題が取り上げられている(P15〜18)。

ここしばらくチベット問題は、地震のこともあり情報が少ないように思われる。平和な日本の世間の関心は、北京オリンピックへとしだいに傾いているかのようだ。そんな時、チベット問題を忘れるな!と、いくつかの内容のある一般向け書籍が発刊されているが、この本は真打ちと言えるのではないか。

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今年3月10日のチベット族の抗議活動に端を発した、チベット蜂起と中国の弾圧以来、何が真の原因なのか世界中をいろんな議論と説が飛び交った。ダライ・ラマの穏健主義に飽き足らないチベットの過激な青年層の破壊行為が直接の原因だというようなことも言われたが、もともと背後に中国軍と政府の挑発行為があったことを、著者ペマ・ギャルポが書いている。

経済発展を続ける今の状況を機に、人権抑圧を重ねてきた中国共産党の歴史を払拭し、現代的な民主主義の国への脱皮を期待して、中国にチャンスとして与えられたオリンピック。中国政府自身がそうなるべく約束して進んでいた今日の状況下で、民主化を求める中国人もダライ・ラマやチベット人も多少の期待を表明した時期があった。しかし、その水面下で行なわれていた実態は、実は人権擁護や民主主義を求める活動家らへの締めつけであった(中国共産党は変わらないのか?「人権」主張は国家転覆扇動罪)。

中国が国際舞台で見せる笑顔とそうした現実とのギャップは、変わろうとして変われずもがいている中国だったのか、それともその笑顔自体がもともと、国家に反逆する民主活動家をあぶりだすためのポーズだったのか。チベットの現実は、中国の素顔は後者ではないのかと問いかける。

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以前、文化大革命のことに触れたエントリで、こう書いた。『クメールルージュの捕虜となった群衆の中から、かつての体制側国家で知識人であった医者や教師や大学教授、芸術家を選びだし、「君達には新しい国家の建設のために大いに力になってもらう」とだまして呼び出した上で、虐殺するシーンが出てくる。あれは毛沢東の影響を多く受けたポルポト政権が実際にやったことで、その卑劣な手法の源流は中国にある。』(書評:「私の紅衛兵時代」)著者がこれに付け加えてくれた。

『富裕層、知識層の大量虐殺という、1960年代後半の文化大革命から70年代カンボジアのポル・ポト政権へとつながる系譜は、実はこのチベットから始まっていたのです。』(P73)

3月10日はそもそも1959年の「チベット蜂起」の記念日だった。この日に記念行事や抗議行動が行なわれるのは毎年のことだった。発端となった僧侶たちのデモも平和理に行なわれていた。これをここ数年の中ではまれにみるほどの残虐な暴力で解散させた武装警官には、明らかに挑発の意図があったと言われる。

著者は言っている。かつての同じ「あの日」もそうであったと...。

『89年3月10日は、チベット蜂起からちょうど30周年にあたり、チベット全土で民族意識が高まっていました。この民族意識の高まりを逆に利用して、徹底的に弾圧することを考えたのです。以来、当局はチベット人の動きを細かく監視し、命令を実行に移すチャンスを虎視眈々と狙っていました。』(P67)

数回の武装警察のパレードが行われ、記念の日に意識が高まっていたチベット人を挑発し弾圧した。その指揮官が当時チベット自治区共産党第一書記だった胡錦濤。

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現代のチベットの悲劇は、1950年の人民解放軍チベット侵攻に始まる。1959年3月10日、中共の圧制に耐えられなくなった民衆がついに起ち上がる。これが今日チベット民族の記念日とされる、いわゆる『ラサ蜂起』であった。これに対して、3月19日、「血塗られた金曜日」と言われる大虐殺が始まった。

それらを行なったのは全て、今日グローバル経済の中で勢い付く中国と同じ国家である。現在では金融大国をも目指しアメリカをすら追い抜こうとする中国の経済は、ある面共産党による管理国家に埋め込まれた市場原理主義という、言葉上矛盾したものに見える。そうした中国にとっての周辺民族問題は、隠したい真実であると同時に、地理的に資源問題までが絡んでいる。イラクを侵攻しつつ石油を求めるアメリカや、北極海の資源を先取りしようとするロシアの問題などと政治的に共通した内容が、中国の周辺民族問題には隠れている。資源ナショナリズム、新自由主義、イラク戦争、ダルフール、そしてチベット。それら世界の事象はどこかで少しずつ関連し合いながらつながっている。

だから少なくとも「正統派」マルクス主義を標榜する日本の共産党などが、国内の人々の貧困と、大企業の矛盾を告発し、アメリカの世界的謀略を批判しながら、現代社会主義の悲劇の結節点とも言えるこのチベット問題に政略的静観ともとれる沈黙や手ぬるい「書簡」で終ってしまうのは、すこぶる矛盾してはいないだろうかと、もう一度言っておこう。

もちろん日本の「人権派」が、皆おかしいわけではないだろう。しかしどこか現実の見えない人達が一部に居るのも事実。その人達が、むしろこれらチベットの事実に慌てて声を上げず、ただ対話せよと言う。少なくとも人間であるならば、この現実を知って、まさか何も感じないはずはあるまいと思うのだが...。

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P67からP134にかけて、すでにマイケル・ダナムの本や国際法曹委員会からの報告で知られてきた様々な事実に、著者が亡命者から聞いて知っている事実を交え、驚くべき中国の蛮行が書かれている。あまりに酷く、引用することもためらわれるので、見出しだけ並べる。

宗教破壊、タムジン、強制不妊手術、子供狩り、電器棒、手錠・空中吊り・拘束板、尼僧へのレイプ、血液・体液の強制抽出、政治犯......。

この中で「タムジン」とは、子供が両親の罪を糾弾したり、子供の銃殺を親に見せたうえで、その銃弾の費用まで払わされ、「反社会分子」の抹殺をしてくれたと、殺害した兵士に感謝させられる行為である(P73)。これを見れば文化大革命期に中国人どうしで行なわれてきた手法を、チベットにおいてはさらに残忍に行なったものと言える。

これらはナチとどう違うのだろう。いやその時間的長さと規模において、すでにナチスを超えた悲劇ではないのか。

TVで流される聖火リレーを妨害しようとする海外在住チベット人たち。彼らの行為が文明国では違法な行為であるのは事実である。しかしなぜ、あんなにも彼らは激しいのだろう? 何も知らない日本人には奇異にすら映る彼らの背景を、もう少し考えてみようではないか。

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