« 住民自治会ってどーよ? | トップページ | 韓国でGPSを埋め込んだ足輪が... »

2008-06-01

『学校選択制』の光と影 (1) 〜 枚方市立中をめぐるニュース

数年前、マンションの上階の方で、親しくお付き合いしていた方が引越しされた。
ちょうどそこの長女とうちの長男が学年違いの同年齢。うちは一人っ子だが、そこは姉妹の二人っ子。同じ様な年齢の子をもつ家庭として、子どもが小さい頃から長くつきあいがあった。その家の引越しの理由は、長女の学力アップのために、もっとハイレベルな高校への進学率が高い、優秀な中学のある地域へ行きたいということだった。

確かに私の住む地域の中学生を見ていると、レベルが高いとは言えない。しかしそれも息子が実際に中学に入ると、全体の平均数値として、レベルの低さを突き付けられることになった。出来の悪い学校行ったって、おまえががんばればいいんだよ、と言っていたのは昔のこと。子どもの勉強が心配だというただそれだけの理由で、一家が引っ越していくのが当り前の時代になった。

もし一家で引っ越しできないなら、子どもを通学区域とは違う、もっと良い学校に行かせればよい。そう考える親も年々増えている。それを実感するの は、我々サラリーマンの朝の通勤電車。都会では高校生がJRや私鉄で通学するのは、ごく当り前だが、それに混じって、ちょっと変わった制服の中学生が増え てきている。子どもを有名私立中に通わせる家は、数年前に比べて明らかに増えている。中高一貫教育を掲げるような、大学付属の私立中学も出てきている昨今 であれば、珍しいことでも何でもない。

そしてこの現象は、公立中学にも大きく影響しはじめている。

昨日の産経新聞の夕刊に、こんなニュースがあった。

「偏る人気 相次ぐ転出 枚方市立中 5年目の“越境入学”」

中学校の“越境入学”を認める制度を導入した大阪府枚方市で毎年度、入学予定者の2、3割が転出する通学区域が生じ、学校間で人気の有無が目立ち始めて いる。生徒や保護者の意思を尊重する「学校選択制」を促す文部科学省の方針にのっとり、近隣自治体に先駆けてスタートして5年目。学力レベルへの不満から の転出がうかがえるケースもあり、導入前に懸念された「格差」を生まないための創意工夫が、現場レベルでは行われている。

大阪府枚方市のやっている制度は、あくまで"通学区域内の中学校に就学する"ことを原則としている。そういう点で、『通学区域がなく、全域から自由に中学が選べる東京都品川区のような「学校選択制」とは異なる。』あくまで、保護者が申し出た場合に「生徒の具体的な事情」を考慮して越境を認めるやり方だった。

しかし現実には、『市教委によると、これまでに認められたのは初年度の16年度162人、17年度189人、18年度218人、19年度286人で、増加傾向にある。』と言う。以下個別の具体例があげられており、越境通学の理由として、『19年度でみると「友人関係に関すること」(40・9%)、部活動に関すること」(33・9%)、「通学距離に関すること」(15・7%)などが多い。』 としている。

A中では、導入初年度には新1年生が他学区へ34人転出し、4クラスになるところが3クラスになった。17年度は2クラスに減り、18年度以降は3クラスを維持しているものの、30人前後が転出する状況は変わらない。

A中校区からの転出先は、隣接するB中校区とC中校区だ。転出理由についてB中の校長は「クラブ活動の選択肢の多さ」を挙げる。B、C中ともクラブ数が 20を超えるのに対しA中は15。B中にはラグビー部、C中にはバスケットボール部と、子供たちに人気のスポーツクラブもある。

B、C中とも生徒数が800人超のマンモス校なのに対しA中は300人。A中の校長は「クラブ数を増やしたくても、部活が可能な部員数、顧問の教諭には限りがある」という。

通学の利便性から転出者が固定化してしまったのはD中校区だ。制度導入後、隣のE中校区への転出者が増え続け、19年度はついに1クラスに相当する38 人が転出した。E中校区に最も近い町に住む生徒はD中に通うのに約30分以上かかるのに対し、E中なら最長でも約10分だ。

『1クラスに相当する38人が転出するような中学が出てきている』という現実は驚きだ。制度導入時に学校が荒れていたからという理由で、『38人が複数の隣 接校区に転出。毎年度30人前後の転出が続く』といった事態が固定化すると、学力格差が拡がるばかりか、その中学そのものの存続も危ぶまれるだろう。

この制度を導入した平成16年の当初、枚方市自身は、そう大きな変動は起きないだろうと予測していたようだ。

枚 方市では制度導入前、保護者から「人気校とそうではない学校が生まれ、統廃合の対象となる学校も出てくるのでは」との声が少なくなかった。これに対し市教 委は「あくまでも事情のある生徒の保護者からの申し込みを受けて別の校区への進学を認めるもの。入学希望者がゼロになる学校が現れることはありえない」 と、そうした懸念を否定してきた。

記事ではこの見込みが甘かったのではないかとして、12年に学校選択制を導入した品川区で、入学希望者がゼロになる中学校が生まれている例をあげている。

確かに越境の理由は、勉強の成績ばかり気にしているようなものではない。しかし考えてみれば、人気クラブの数が多く、教師が授業にも課外活動にも熱 心で、「荒れ」が少なく活気のある学校になっていくなら、学校全体の学力レベルも上がるだろう。入学希望者が少ない学校が、これとは反対にどういうイメー ジになっていくかもおのずと分かる。

私立の学校の教師や関係者はもともと、多くの生徒を獲得するためにどんな努力をすべきか、考えることを強いられているはず。それに対して、こうした競 争原理に馴れてこなかった公立学校の関係者は、とまどいも大きいと思う。

『主要5教科で、週1回放課後に生徒が自習する「学習クラブ」。パソコンから、自分が学習した い教科の問題をプリントし、解答後、自己採点。次回の学習目標を履修カードに書いて教師に提出する。教師は生徒の習熟度を確認、指導するという仕組』といった、転出をくいとめるための取り組みを始めている学校もあると言う。

しかしこういう発想は、厳しい競争のなかに生きる企業人から見ると、いかにも「がっこうのせんせい」的で、どことなくおとなし過ぎる。「モンス ター・ペアレンツ」というような極端な人格も出現する時代、保護者の欲望もまたかつてよりずっとワガママになりつつある。常識的な範囲の欲望であれば、それを責めることもできまい。親 の願いは、子どもが将来生きていく社会の厳しさを、肌で実感しているところからきているからだ。

東京の例のように、有名進学塾と学校が連携すると人気が出るかもしれない。しかしそうした方法は、地域の公立学校全体で取り組まなければ、かえって 学校間の格差を広げるだろう。残念ながら現状では、教育現場関係者の努力のスピードよりも、少子化のスピードが速い中で、学校間格 差がさらに開いていくだろう。

ダメな学校などつぶれてしまえばいいという、新自由主義的考え方もあるかもしれない。しかし、子どもの数が少なくなったとは言え、生き残った勝ち組 学校の数が絞られ、そこに通える子と、家庭状況などの諸事情から勝ち組学校に入れない子どもたちがはっきり区分される現実がすでに始まっている。そこから生徒間格差がもっと拡がっていくのは明白。それは社会に出てからの人生の格差につながっていく のではないか。

「学校選択制」が、はたして新自由主義論者の言うような「健全な競争」を生み出すのか? もう少し考えてみようと思った。

(つづく)

-

« 住民自治会ってどーよ? | トップページ | 韓国でGPSを埋め込んだ足輪が... »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 住民自治会ってどーよ? | トップページ | 韓国でGPSを埋め込んだ足輪が... »

aBowman

別荘はこちら

  • Marbles2
    音楽、美術、映画、本など趣味的なページはここに移転しました。考えるのが面倒だったので、タイトルは単に2です。

ウェブページ

2018年10月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

mail

  • 82pkdick@gmail.com

最近のトラックバック

無料ブログはココログ