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2008-07-14

市民病院についてのシンポジューム~医者不足と医療への無理解(1)

Yubarihp夕張市が赤字再建団体になった話が伝わって久しい。ニュースでは夕張市立総合病院の打ち捨てられたような姿が何度か映されている。夕張を去ることのできない老人達の医療はどうなるのだろうと思う。かつて171床あった夕張市立総合病院は、19床の診療所と40床の老人健康施設に規模が縮小されたそうだ。

大阪橋本府政も赤字財政では夕張のことなど言っておれない。そんな大阪府の中でも、やはり夕張が他人ごとではない我が市の市民病院の経営をめぐって、シンポジュームが開かれたので参加した。市民や医療関係者650人が参加した。

うちの市民病院は18年度と19年度の決算合計で30億円以上の赤字を出している。パネリストの医療経営者や医師から出されたのは予想どおり、医師不足の問題や病院の情報公開の話であった。

出されたテーマは大きく2つあった。

  • 「機能分担と広域連携を基本にした地域医療のネットワーク化」
  • 「福祉との連携による患者サポート」

こういうシンポジュームに出て思うのは、話された施策が具体的にどういうものになるのか、それが見えなければ、理想を謳うスローガンだけでは賛成しにくいということ。

とは言っても一つ目の「地域医療のネットワーク化」などは、やってみなければどういう形になるのか見えてこず、必要性を痛感するだけに頭から否定できない。

もう一方の「福祉との連携」については疑問も残る。「病院での在院日数を短縮し、その分を介護事業でカバーします」とパネラーから言われると、持っ ていき方によっては医師不足への刹那的な対処になるのではないのか。「福祉との連携」と聞こえはいいが、早く病院から患者を追出すだけになりかねない。ま たそれをカバーさせられる介護事業に、今どれほどの体力があり、どれほど資金が援助されていると言うのか、つい疑問に思ってしまう。

2つのテーマが医師不足問題に関わるのは分かったが、このシンポジュームでは、パネラー側にもう一つの視点があった。パネラーの一人だったある医師が、こう言ったのである。

「公立病院の医師不足の問題は、研修医制度の改革だけでなく、医療労働者に対する行政や市民の無理解が原因している」

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以 前国が医療関係者の懇談会を開いた際、きっと医学的内容や診療報酬の話が出るだろうと思っていたが、実際にはいわゆる「モンスターペイシェント」への不満 が思いのほか多かった。この日のシンポジュームでも、医療労働者からはこの手の「医療への無理解」の話が多く出されたのである。ただそれは我々市民の側から見て、けっして不快な言い方ではなかったことも付け加えたい。不快どころかむしろ現場の人々の苦悩が伝わる、考えさせられる話であった。このごろ世間でもよく聞く救急車をタクシーがわりに使う悪質な話も多かったが、医院内部での患者と医者とのトラブルも増えているそうだ。折しも大阪府が社会問題化する「モンスターペイシェント」に対して、対策に着手し始めたという話題も出された。このニュースをネットで調べてみた。

軽症にもかかわらず救急車を呼んだり、治療費を踏み倒したりする悪質患者「モンスターペイシェント」が社会問題化する 中、大阪府が、救急医療の適正利用を呼び掛ける広報活動などを予算化し、本格的な対策に乗り出すことが19日、わかった。軽症での救急医療利用率をめぐっ て大阪府は全国平均を大幅に上回っており、こうした施策は全国的にも例がないという。背景には「救急車はタダでトク」との考え方もかいま見えるが、医療現 場からは「行政の呼び掛けにどこまで効果があるかは不透明」との声もあがっている。

しかし、救急車など呼んだことのない私には、ここで言われている「軽症患者」がどういうものなのか知って驚く。

  中には「モンスターペイシェント」と呼ばれる悪質な患者もおり、具体的には「日焼け跡が痛くて眠れない」「コンタクトレンズを長く装用しすぎて目が痛い」 など、傷病ですらない症状を訴えるケースもある。アルコール中毒や薬物中毒で暴れる患者も多く、府内のある救急病院の医師は「患者の1割近くがモンスター ペイシェントだ」と指摘する。

平成18年の府内の救急搬送人員は45万4630人、10年間に1・54倍増加しているとある。そのうち軽症患者数は、18年の全国平均52%を大きく上回る64・9%にのぼるのだそうだ。軽症患者に救急医療を使われることで、ただでさえ医師不足な現状がさらに苦しくなる。

 一方で、全国的な医師不足により救急病院勤務医の確保は困難な状況で、府内の救急医療機関は19年度末で260カ所と10年間に22カ所減少。軽症患者の救急利用が、現場にさらに深刻な影響を及ぼしている。

救急車をタクシーがわりに使うような、そんな奴等には救急車自体を有料にしろ! などと大阪の荒っぽいおっちゃんたちなら言いそうだが、実際そこに居合わせる救急隊員や医師にとって、どこまでが「モンスターペイシェント」なのかを判断させるなど難しいだろう。

 府では、軽症患者が救急車を利用した場合の費用の有料化も検討したが、管轄する市町村の条例をすべて変える必要があることや、消防庁が有料化に否定的な見解を持っていることから「現状では難しい」と、見送られたという。

「否定的な見解」とはどのようなものか書いてはいない。ただ背後に、医療労働者と患者という独特の関係が絡んでいることが想像される。救急医療現場での判断は、好結果と医療ミスとの間の綱渡りだろう。単純に言えば「モンスターペイシェント」と決めつけたが、医師が重大な見落しや判断ミスをしていたらどうなるのかということ。例えば「救急車有料化のさなかに〜迷惑患者と決めつけられたある女性、たらい回しの末搬送先で死亡」なんてニュースになったら...。

医 師の収入と一般の我々のそれとの格差や、起きてしまった医療事故での医師や医療関係者の問題はクローズアップされることが多い。しかしそれが全て の医療関係者の姿を表しているわけでもあるまい。実際、以前雑誌東洋経済に載った記事のように、我々サラリーマンと変わらぬ年収でありながら、長時間労働を強 いられている医師も居る。多少年収が多くても、相対的に割に合わぬ労働内容で働いている医師も多いだろう。

救急医療に限らず、医療行為そのものが持つ特有のストレスというものが、患者側である我々には見えにくい。命をあずかる仕事でありながら、じっく りした判断の余裕を与えられないといった問題。一人で抱えるにはあまりに多くの患者の問題を考えなければいけないという問題。そして、普段どんなにマトモ な医療をしていても、ちょっとしたミスでマスコミに取り上げられるという心理的圧迫。これらは実際に医療現場に携わらなければ実感できないストレス要因だ ろう。困難があれば気が引いてしまったり、人生の計算を優先するような傾向が、昔より今の若者には強いとすれば、医療の世界に飛びこんで働いてみようとする人 達の数が減ってきているのも無理はないのかもしれない。

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今回のシンポジュームでは、前半は民主党系議員パネラーの微妙な施策提案、後半は救急医療を侵蝕するモンスターペイシェントの問題に話が流れてしまった。これだけでは我が街の市民病院が抱える問題はいまいち見えてこない。「研修医制度の改革」で言いたかった中身は何なのか、「行政や市民の無理解」と言うが、医療行政の問題と患者側の問題は質が違うだろう。いったい「医療労働者に対する無理解」の根源にあるのは何で、誰がもっとも「無理解」なのか、考えるべきことは多い。

最近は特に、小児科とか、産婦人科とか、外科とか、患者との関係でトラブルが多く、訴訟を抱える確立が高い医科の医者数が不足していると聞く。同時にそうした科は行政の手だてが最も遅れている科でもある。我が街の市民病院も待ったなしの改革を求められている。どうしたらいいのだろう。病院の情報公開とともに、我々情報を受け取る側も考えなければならないものが多い。

(きっとつづく)

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