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2008-07-25

激流中国 最終回

NHKの「激流中国」が最終回を放送した。昨年の4月から始まり1年あまりにわたり全13回の長い特集だった。予定どうり北京オリンピックが始まる前に全編放送を終えたことになる。このブログでも07年9月に放送された「民が官を訴える 〜土地をめぐる攻防〜」を取り上げたことがある。

最終回は「告発せよ摘発せよ〜環境破壊との闘い」、今、北京オリンピックを間近に控え、世界中が注視する中国の環境問題への取り組みを取材したものであった。世界から環境問題にもっと真剣にならなければ先進国家として見られないと言われてはじめて腰を上げた感のある中国。

以前、中国吉林省の石油科学工場爆発で、松花江に約100トン以上のベンゼンなど汚染物質が流れ込んだ事件があった。ロシアのアムール川は、途中で松花江と合流するので、アムール川を取水源とするハバロフスク市は大きな被害を受けた。汚染物質はオホーツク海を回って北海道に流れ着くので、これは日本にとっても人ごとではない。誰もが知っているように、オホーツク海の流氷は北海道に流れ着く。流氷には有害物質が含まれる可能性が低いとか、融けだした有害物質も、膨大な量の海水に混入するため検出不可能な微量となるとか言われているが、発ガン性物質であるベンゼンは、食物連鎖を経てより上位の生物に取り込まれ濃縮される。それを食する我々にとって、けっして気持ちの良い話ではない。例えばオレみたくサケの好きな人どうよ。さらに毎年大陸から吹く黄砂にも、中国の化学工場から出る汚染麈の含有率が増えている。このところ毎年のように、春先になるとのどがやられるのは、この毒入黄砂のせい?

こうした状況の中国で環境問題の取材をやれば、誰もが第一に関心をもつのは、中国政府がどこまで環境汚染に取り組む気があるかということ。残念ながらここがNHKらしいというか、番組にはスローガンと胡錦濤の演説だけしか出てこない。主役は、政府とは独自に環境問題に取り組むNGOのリーダーのある女性であった。

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ダムを作る、発電所を建設する。それが「あなたたちの村の進歩と豊さにつながる」農民を説得する役人の言い方は、チベットを占領した中共の論理そのままだ。
そう言われ、土地を追われて、結局豊かな暮らしどころか、ダムの近くの河原でゴミの中から売れるものを探す元農民たち。環境NGOのリーダーである女性は、村を追われた農民から話を聞き、ダムが自然環境を破壊すると告発する。時には調査をじゃまされるなど、妨害もされる。

ただ、見ていていくつか疑問も湧いてくる。主人公の女性、NGOのリーダーでありながら国営放送の記者という肩書、元記者ならわかるがいったいどういう立場だろう? (つーか中国にほんとのNGOってあるのか??)

番組にはもう一方の主役も出てくる。国に依頼され、法律に違反して環境汚染行為をする企業を追求するために設置された調査官。片や国営企業の汚染隠しとNGOが対立し、片や国営の調査官が厳しく汚染を取り締まるというのが、いかにもその場しのぎで施策を打つ中国らしい。結局、国が経済発展に邁進しろと言えば、会社を作り産業を進める。国が環境重視だと言えば、環境調査官が作られ、違反した者は逮捕される。役人は反発したり、「成果が上がらない。無理だ!」という部下や民衆に、ただやみくもに「やらなければならないんだ!」と檄を飛ばすだけで、やらなければならないことの中身は、その都度の国家政策しだい。取り組む中身は数年前と正反対であったりするわけで、その中で人々が、その都度変化する政府の法律にひっかかり逮捕される。

それはつまり、環境汚染も環境保護も、もとをたどれば国家が国民にやらしてんじゃねえのか! ということなのか?

こんな国に、自分の責任を考える人間は育ち難いだろう。ダムに反対する住民に、なぜここにダムを作るのか? と問い詰められ、ただただ「上に聞け、これは上からの命令だ」と繰り返すだけの工事監督。基準値の100倍に汚れた排水を垂れ流す工場の社長が調査官に問い詰められ、「だったら廃業する。こんなことなら町から工場を引き受けなければよかった」と愚痴る。何でも人のせいである。

ああそうか、この工場主は部分的資本主義化導入の際に、公営の工場をまかされたんだなと、見ている我々はそのとき気付く。いやしかし、この関係は社会主義ゆえの分かりすい実例だ。まかされた仕事だからオレは知らねえという関係は、日本のいたるところにもある。もしこの話に得るものがあるとすれば、極端な一つのサンプルとして、やはり無責任国家になりつつある我々の国への警鐘と捉えるべきか。

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この一連の特集が始まった時、NHKらしい突っ込みの浅さや、一面性がちらつく番組だろうと思っていた。だから正直、はじめはあまり期待していなかったし、全て見たわけでもない。で、見終ってNHKらしい突っ込みの浅さは、やはり目についたと思う。どこか描かれていない部分、なぜ取材できたのか不思議な部分などもある。

特に第6回の「チベット、聖地に富を求めて」は、チベットを観光地にして儲けようとする中国人ホテル経営者と、そこで働くチベットの人々を映し出し たが、普通の資本家と労働者の話を大きく出るものではなかったし、ほんの少し使った中共のチベット侵略史に関する映像も、実に中途半端であった。まあ、 NHKに中国のチベット弾圧史を正しく全面的に放送せよと期待するほうが無理だろうが、他の中国人どうしの話においても、掘り下げの足りなさは感じた。例 をあげれば第8回「 訴えられたカリスマ経営者〜追跡・ブランド騒動〜」。あの特集は、中国のカリスマ経営者を賛美しているのか、フランスのダノンに同情しているのか、どちらだろうか?

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しかしそれでも、この番組を低く評価しすぎることは私はできなかった。なぜなら、「それでも映っ てしまった何か」がそこにあったように感じたからだ。いくばくかであれ、そこに今の中国の真実が含まれているのではないか、そう思える。

なぜそう思うかと言うと、当の中国はこの番組を封鎖したからだ。

「激流中国」は中国ネットでも流された。「下層社会が経済発展により遭遇した不平等な待遇、中共の言論の自由に対する制限、貧富差の激化などの問題について詳しく描写したもの」として、中国の視聴者の好評を得た。その後中国政府は「激流中国」に関するすべての情報を封鎖した。

(以下抜粋)
中共はNHKに放送を停止するよう要求し、現在はもっと多くの人に知られないようにネットを封鎖し、それに関係する映画や検討などすべて禁止しています。一方、NHK側は今後番組の取材、撮影、放送などを保障するために、『激流中国』に関するすべてのインタビューや取材を断っています。

『激流中国』の撮影内容は、中国の教育現状、十七大、チベット鉄道、物権法、医療保険制度、世界に向かう中国企業などです。番組が放送されてから、中共外交部新聞司及び中共駐日大使館がNHKと交渉し、当番組は「客観的ではなく、観衆に誤った情報を提供し、中国のイメージを損害する」と表明しました。

その後、NHK側はもともと月1回の放送予定でしたが7、8月分の放送を中止し、今後の『激流中国』の番組は「中国政府の立場」をもっと反映すると表明しました。しかし、放映回復後の9、10月の番組「民が官を訴えるー土地をめぐる攻防」と「チベット 聖地に富を求めて」からを見れば、NHKの真実を報道する姿勢は変わっていません。

従って、「激流中国』が放映されてから、日中両国国民の激しい反映を受けました。日本では大手ネットに百万近い紹介文章や感想、評論などが掲載され、中国ネットの視聴者は番組で披露された社会問題について共感しています。

このサイトの方が書いておられるように、私も何篇か見てきて「激流中国」が本当に客観的な番組だったか疑問はある。たしかに、この情勢下で漢族のチベット民族同化を語るなら、「チベット、聖地に富を求めて」のように、軍事的弾圧についてほんのわずかしか触れないのはおかしすぎると言えるだろう。NHKの問題という視点から見れば、引用サイトの方のおっしゃるとうり。

しかしこの程度のものを今どき放送禁止とする中国の姿勢に、情報文化へのアナクロニズムが見える。またかという感じで、溜息である。封鎖されてしまっては仕方ないが、この番組を見た中国の民衆が何を感じたのか、かえって聞きたくなってしまった。

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