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2008-08-16

銚子市立総合病院がえらいことになってます (1)

わが市の市民病院の財政危機問題をきっかけにたまたま知った、銚子市立総合病院の経営危機問題。あの記事を書いたのは7月半ばだったのだけれど、最近「銚子市立総合病院」の検索で来る人が急増している。何かあったのかな? と思ってググっていたら、えらいことになってます!

まず市が8月7日に説明会を開いたらしい。この市民向け説明会、YouTubeで探していると動画があった。見ればわかるが、市長も出席している中でかなり激しいやりとりがあり、年配の市民を中心にしてかなり怒っているのが伝わってくる。何よりもまず、具体的な経過段階でなく、いきなり病院の中止=閉鎖を伝えたこと。あの夕張でも、まがいなりにも病院を存続させている。市民病院の閉鎖というのは、全国的にもまだ例がない。

TVで『朝ズバッ!』などがニュースで取り上げている。

「弱者のために市長になったのではないのですか」。千葉県銚子市で昨日(8月7日)ある説明会が開かれ、市民が「公約違反だ」と岡野俊昭市長を厳しく糾弾する一幕があった。

医師不足から赤字が累増し、唯一の市立総合病院が「9月休止」に追い込まれ、その説明会での出来事である。岡野市長は苦渋の色を顔に滲ませながら「理由は、理由は……カネが尽きたんです」と答えるのがやっとだった。

この問題の一番の原因は医師不足だが、医師不足を招いた直接のきっかけは、やはり以前調べたとおりの「新臨床研修制度」。番組で元宮城県知事の浅野史郎も「ここだけじゃなく全国どこでも抱える問題。医師が不足しているために、残った医師がさらに過重労働になり辞めていく。悪循環になっている」と指摘していた。厚労省は、組織運営を見直す「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」の第1回懇談会を8月7日に開いたが、そもそもこの全国的に広がる地方公立病院の経営危機問題への意識が弱く、土台づくりからやり直せとの声も飛んでいる。

「新臨床研修制度」が市民病院などの医師不足を招いたプロセスは、前に調べた内容でだいたい合っていた。以下J-CASTニュースや産経などの記事から抜粋。

  従来、大学を卒業し、医師国家試験に合格すると、医者のタマゴ達は2年間の臨床研修が「努力義務」として課せられていた。が、ほとんどは大学病院でタダ同然に酷使されているとの指摘がされ、制度が改正された。
  こうして発足したのが
厚労省の『新臨床研修制度』なのだが、研修先の病院を医師のタマゴが自由に選択できる仕組みのために、研修先は医療設備や臨床例が充実し居心地のいい大都市の病院に集中。
  一方、医師が減少した大学病院は、補充するために地方の病院に派遣していた医師を引き上げる動きも顕著になった。
  結局「新臨床研修制度」が発足した2004年4月以降、医師不足が顕在化し診療体制の縮小を余儀なくされる公立病院が増加。しかもそれに伴い収益も悪化し赤字が累増していった。
医師不足が顕在化したのには、研修先を自由選択制にし、一極集中を促すような制度にしたことが背景にある。厚労省も制度の欠陥を認め現在、見直しを進めているという

地方病院の医師不足はもっと前からあったが、この「新臨床研修制度」が始まってから特にひどくなったようだ。銚子市立総合病院の場合、医師不足は檄的なスピードで進み止まらなくなった。2003年度35人いた医師は現在12人で、とてもじゃないが救急患者や入院患者を治療する体制ではないという。7月に記事を書いた時は医師13人だったから、このひと月でまた1人辞めたってか? 赤字も膨らむばかりで、03年度5億円だったのが、07年度は18億円に膨らんでいる。

ただ、市民病院閉鎖などという深刻な問題の原因全てを、研修制度に持ってくるのも無理があるように思っている。これから医師となる人達が、自分の働き場所を、指導教授の指示で決めるのでなく、自分で決める自由をもつことに、問題があるとは思えないからだ。医師個人の選択の自由を否定するような議論をいくらしたところで、水掛け論になるに決まっている。

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さて、すでに全面休止する方向が打ち出された銚子市立総合病院の場合は特に、単に研修制度がどうとか言う話では終わらないようだ。市民にとって必要な病院であったことはまちがいなく、では財政悪化が進んできたこの数年間、医師不足をカバーするための何らかの施策を市が打ってきたのかという問題が、あらためて健在化してきた。

次の写真、どっかの盆踊りの後で家路を急ぐ人々の写真ではない。

Tyousi01_2

ついこの前、8月5日夕刻にかけて行われた、銚子市立病院休止反対のデモ行進である。

市立病院の存続を求めて、7月19日には「公的医療を求める市民の集い」が開かれ、700名以上の市民が参加したと言う。そして、病院存続に向けた署名活動 も開始され、短い期間に3万8996人分の署名が集められ、8月5日には市長のもとへ届けられた。同日夕には市役所前で署名報告会&デモ行進が開催さ れ、多数の市民が参加している。

どうもこの問題、病院廃止に反対する市民運動となってきている。検索ワードが増える理由がやっと分かった。

詳しくはJanJanのこの記事に載っていた。

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ポイントはいくつかありそう。

(1) まず、9月末日をもっての休止は、岡野市長の公約違反であるということ。

(2) そして病院の経営危機は事実であるが、そもそも市の財政悪化の主たる原因は市民病院の問題ではない。病院への支援打ち切りは、本来優先順位の高いサービスへのしわ寄せであること。

銚子市立病院がこの数年間、医師不足が深刻化し、経営状況が年々悪化していることは事実だが、市当局は新しい市立高校の建設をPFI方式(民間の資金、経営能力、技術力など活用して公共サービスを提供する方式)により行い、あらたに70億円 近く借金するなどしている。また、前市政は銚子市への大学誘致に公費を90億円以上も投入しており、市の財政危機の最大の要因を作っている。

(3) また市の財政悪化がこれ以上続くと、夕張市のような最悪の事態になるので、今のうちに病院への支援を打ち切らなければならないという理由付けには、無理があるということ。

夕張市でも、市立病院は地域医療の中核施設であり、市民の大切なセーフティネットであるとして、現在でも何とか存続させている(つまり廃止されたわけではないと)。銚子市よりもきびしい財政状況の自治体においても公立病院の維持は続けられているところが多い。
  また、銚 子市と夕張市を比較した場合、両者の財政規模の違いなどを勘案すれば、銚子市が“夕張市状態”にあると言えるためには、現在の時点で2千億円以上の負債が 銚子市に存在しなければならないが、現在の銚子市の負債は3百億円。2007年度の一般会計の決算では黒字が見込まれるとの報告もある。つまり銚子市は“夕張市状態”には“ほど遠い”。

(4) 病院の廃止が市の財政悪化を緩和したりしない。

市長はこの2年間で病院の企業会計に市の一般会計から30億円以上の補填をおこなってきたとし、今後も病院を存続するためには毎年、市の一般会計から9億円の補填をしなければ病院存続が不可能として、病院休止を主張している。しかし、実際に病院を廃止すれば、看護師や医師など200人以上の退職金の工面を含む清算業務が発生し、新たに総額60億円が必要になる。市の財政危機は深刻になりこそすれ、緩和するわけがない。
  市民側の試算では、今年9月に病院を休止すれば、今年度中に12億円の清算費用が発生し、翌年度以降も毎年7億円以上の清算費用を払い続ける必要がある。

病院廃止によって発生する費用60億円の中身が、医師や職員の退職金等以外に詳しく書いていないので、そこらへんもっと具体性を持たせたほうが説得力を持つと思うが、その他の点ではおおむね納得できるようにも思える。職員の退職金以外の費用部分はおそらく今までの借金の返済がほとんどを占めるのだろう。

こういう記事を読んで思うのは、市民運動の側に市の財政状況や、前市長までのものも含めた財政運用歴を細かく分析報告してくれるスタッフ、特に民主的な立場の議員が必要だということ。できれば市の職員側を切り崩すことができればいい。内部告発は有用な手段。それらのネットワークを使って、代替財源の提案も含めた、市民を納得させるだけの材料が揃えば、くすぶり続ける市民の怒りを、具体的な運動へと点火させるのは可能だということだろうが。

この間いろんな記事を読んでみて、たしかに医師不足問題を「新臨床研修制度」から生まれた問題として捉えるだけでは、視野が狭くなると感じ始めている。厚生労働行政の在り方には疑問を持っていかなければならないが、一方で市民病院は、"市が運営する"ものゆえ、どこかで「問題のすり替え」をやって利権を得ている上部の人間が居るということではないだろうか。本来市民の立場に立って支援策を考え実施すべき役割りの人間が、どこかで病院のせいにして自分の利権にへばりついているのではないのか?

そういう意味では、市民病院の問題は、単に医師不足の問題や医療分野の問題ではないのであろう。モンスター・ペイシェント問題に視線が行き過ぎてしまうのもどうかと思うようになった。

ただ、個人的な本音を言うと、私はJanJanの記事を鵜呑みにはしていない。少し距離を置いた視点も必要かと思う。銚子の住民でもないし、詳しいことがわからないのではっきりしたことが言えないんだが、ネットで他の情報を読んでいるとチラチラっと気になる点がある。その辺は長くなりそうなのでつづきに書くことにする。

銚子市立総合病院がえらいことになってます (2)」へ続く

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