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2008-12-18

「08憲章」〜専制政治か、民主的政治か〜

ネットで公開されている「08憲章」の文面からは、起草した人達の断固たる覚悟が伝わってくる。

前言21世紀の中国が継続して専制政治下での“現代化”を歩むのか、文明的で民主的政治を建立するのか避けて通れない選択だ

中共の統治下でその政治を堂々と「専制政治」と呼ぶことに決意のほどがにじんでいる。

憲章はさらに、1949年の建国後の現代中国の歩みをこう切り捨てている。

「『人民共和国』の名の下、実質的には『共産党の天下』であった。事実上共産党が「政治・経済・社会の資源すべてを独占してきた

と現体制 を痛烈に批判。

「改革開放で生活水準が上がり、政治の自由を求める声も高まると共に、執政者も耳を傾けつつあるが、もう一方では法治はなく、専制政治で政治改 革をせず、腐敗がはびこり、道徳が荒廃、社会が二極分化した

「改革開放から30年たつが、特権とコネを持つ者だけが懐をますます肥やし」「中国社会は不公正な社会だと受け止める不満層が、中国国内には極めて多い」

結語絶え間なく人権に災難がふりかかり、社会危機がつくられ、中華民族の発展を束縛している。必ず変革しなくてはならない。政治民主化へ の変革は引き延ばせない」


産経の福島香織は、記者ブログで 「日本の政治よりおもしろそう」と言っているが、実際そう思う。中国の民衆が命がけで国を動かしていこうとしているのに比べて、日本の政治は大量の雇用不 安にたいしてまるで人ごとのようにカッタルイ。苦しむ民衆の為の国家観、ビジョンを示すことのできる政治家は、日本では皆無といっていいような対象的な状 態。日本人である我々の側も、チベットやウイグルの問題など、全ては国家としての中国=中国共産党を批判してきたのであって、中国の民衆もまた国家の被害 者であることを忘れてはいけないと思う。少数民族の抱える問題は、他の中国人の抱える困難とつながり、逆もまた真なり。中国の民衆の中にも、洗脳されず に、ことの本質に気付いている人達が大勢居るということに、希望を感じてもいいと思う。

「08憲章」を起草した人達が命がけだというのは事実のようで、福島氏が参照している以下のサイトを読むと、起草者の一人である劉暁波氏は『国家政権顛覆煽動罪』で投獄されることを予想して、ちゃんと用意をしていたようだ。

このサイトの記事は日本のマスコミの物足りなさも指摘している。「中共政権に対する「叛旗」、知識人による「宣戦布告」ともいえる、ある意味歴史的な文書が出現しながら、日本のマスコミによる報道は遺憾ながら未だ詳細に欠け不十分」実際、産経が一番熱心に報道しており、あといくつかの新聞が書いている。朝日は無視状態。ついでながら「赤旗」は、ちっちゃく載ってたのにオレが気付かなかったのかもしれんが、「しんぶん」のサイトで「08憲章」で検索しても何もヒットしなかった(「憲章」ではたくさん出てくる)。

上記サイトでは、今回と天安門事件との違いも冷静に分析している。

——1989年の民主化運動〜天安門事件当時と比べて、「08憲章」の主張する内容には相違点や進歩した点はあるか?

「1989年の学生運動(民主化運動)は、北京の大学生が官僚による汚職蔓延への反発や胡燿邦の再評価を求めたことに始まり、それが報道の自由、トウ小平 引退を求めるという、国内はもとより世界の民主化運動を震撼させる圧倒的な動きに発展した。鎮圧されてはしまったが、その意義は極めて大きい。だがあの運 動は、全体主義体制を根本から全面的に改造するという大方針を最後まで打ち出すことはなかった

「当時の天安門広場のリーダーたちは結局のところ、政治的・思想的にまだ未熟な大学生だったからね。だが今回の『08憲章』はほぼ形の整った中国改造の民 主化綱領で、ここ百年の中国における無数の志士たちの心血と夢が凝縮されている。だから内容についていえば、『08憲章』は明らかに1989年の学生運動 よりも遥かに高い見地に立ち、とても成熟したものになっている

この違いをふまえてさらに「現在の大学生は質の面で1989年当時より大きく劣り、社会的な問題意識も希薄」であり、「広範な庶民や国際世論に支持されることを期待する」としている。

ここ20年近くの中国の『国民社会』の発育と成長が、『皇帝への上書』といった伝統的な考え方から知識人を解放し、社会に直接訴えかけるスタイ ルを生み出した。それが今回、わずかな時間で300名以上もの、しかもその大半は知名度も活動分野もバラバラな人たちの署名を集め得た要因だ」

日本でも、今村仁司や加藤周一ら多くの非共産党系の知識人は、東欧から米のベトナム反運動まで広がった1960年代後半と、80年代後半の東欧共産圏の崩壊につながる政治情勢を歴史の分岐点として重視するが、今回の『08憲章』もまた、これらの歴史の教訓から学んでいるという発言が出てきたことが興味深かった。

「外国の経験に学んだこと。チェコの劇作家ヴァーツラフ・ハヴェル氏が1977年、ヘルシンキ宣言に織り込まれた人権擁護を当局に対し求めた 『憲章77』が、1980年代のチェコや東欧の民主化に歴史的貢献を果たした。これは中国の知識人たちにとって忘れることのできない啓示だ」

個人的には「『08憲章』には保護者の存在が全く見出せない」として、今回の運動に明確な後ろ盾がいない(にも関わらず広がっている)ことに注目したい。これは天安門事件の時のように、学生の指導者を逮捕したり、学生に同情的な党幹部を粛正したりするやり方ではおさまらない構造を、運動が持ってしまっていることを示していると思う。運動そのものは大弾圧で終わるのかもしれないが、それでも地上的な広がりで継続していくだろう。ネット時代に呼応していると感じる。


以下新聞から、「08憲章」の骨子を転載。憲章に書かれた内容を裏側から読めば、現在の中国民衆の置かれた社会的状態をうかがい知ることができるだろう。

1.) 憲法の改正

憲法をいかなる個人、政党(共産党)も超越してはならない国の最高法律とし、中国の民主化の法的基礎を築く。

2.) 権力の分散

立法、司法、行政の三権を分立させ、政府の責任を明確にし、行政権の膨張を防止する。中央と地方の権力を分離し、地方に十分な自治権を与える。

3.) 司法の独立

司法の独立を保証し、公安、検察、裁判をつかさどる共産党の政法委員会を廃止する。

4.) 軍の国家化

軍は国と憲法に忠誠を尽くすべきであり、軍内部にある政党(共産党)の組織は撤退する。

5.) 人権の保障

立法機関に人権委員会を設置して人権侵害を監視し、法律に基づかない逮捕、拘束をなくし、労働矯正制度を廃止する。

6.) 都市と農村の平等

都市部と農村部の不平等な戸籍制度を廃止し、国民の平等の権利と移住の自由を保障する。

7.) 言論の自由

新聞発行の自由を認める。刑法の中の「政権転覆扇動罪」を廃止する。

8.) 宗教の自由

政府が宗教活動を干渉しない。宗教団体成立の際の許可制を届け出制にする。

9.) 財産の保護

私有財産を保護し、土地の私有化を推進する。

 

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コメント

現在の中国憲法って、どんなのだろう?
08憲章って、日本国憲法より程度が低い。
とくに、人権の保障を、人権委員会に委ねるって、その程度で人権保障が成るかね。
08がこの程度では、中国の最高法規というのは、相当、程度が低いのであろう。

はじめまして。ここは中国国家への批判と中国民衆への気持ちをちゃんと区別して書いて下さるので、さほどの嫌悪感なく時々読ませてもらってます。

ところで、↑の人、適当なこと書いてますネ。わたし自身は中国憲法や08憲章がOKなどと全く考えてませんが、↑の人みたいに自分の調べてもいないことを簡単に「程度が低い」という人の程度の低いコメントを、ネットで時々目にします(少数派みたいですがw)。そもそも憲法なんて文面上の問題があったとしても、その文面上のわずかな人権すら守られていない現状がまず問題。だから短絡的な中国バッシングなんて無意味。今わが国と日本の文化交流はとてもさかんで、我々のように日本に来ている学生は、日本のネットの意見とかよく読んでますけど、「08が日本国憲法より程度が低い」なんてネトウヨでも言いませんよw
こんな↑程度の人が「人権」って言葉を振り回すこと自体がお笑いです。

記事中の福島香織さんのブログあたりから、いろいろググっているうちにここに来ました。

08憲章の「6人権保障」には、「人権委員会」のことを「最高民意機関に対し責任を負う人権委員会を設立し、政府が公権力を乱用して人権を侵害することを防ぐ」としています。「何人も不法な逮捕・拘禁・召喚・尋問・処罰を受けない」ともあります。「人権委員会」のような末端機関に「人権保証を委ねる」とはどこにも書いてないです。上記産経のまとめた憲章骨子にもそういうことは書いてないし。最初のコメントの方は文章読解力が無いのでしょうか?

08の言っている「最高民意機関」とは現状の共産党支配の国会とは全く違うもので、憲法も改正しようと言うのですから中共から見ればかなり過激。それに憲章や制度だけで人権が守れるとは誰も言ってませんし、守られてないからこうして民衆が立ち上がったということだと思います。

憲章原文はおろか苦労して翻訳されてる方の文章もろくに読まずに、KYで低次元なこと書いてる筍さんのような方がおられるようですが誤解の無きよう申しておきます。

今までのことを思えば憲章の内容は画期的だと思いますが、今の中国でそう大きな進展は無いだろうと思えてしまって...、正直冷めた目で見ています。

中心になった人物がもう数人逮捕されて、終息に向かうんじゃないでしょうか?

匿名希望さん、花水木さん、
JGBさんの記事の、08骨子だけ読んで、素直に思ったことだけ書きました。
この記事読んで、08憲章なんて、初めて知ったものですから。

日本の法務局に「人権擁護委員会」というのがあります。
それは日常的な生活の中での差別問題を受け付けます。
08の「人権委員会」という言葉からそれを想起させられました。
日本では、小さな事も人権問題として声を上げることができます。
中国では命を賭けなければいけないことを、人権問題というのですね。
中国の「人権」と日本の「人権」とは、差があるようです。
私も中国人民の国家による人権侵害には、なるべく関心を持つようにしています。
日本のテレビで流される程度の内容しか、つかみきれませんが。

私は長いこと、日本共産党員でしたが、中国の国民は国家に大事にされていると思っていました。赤旗には、中国国家の人権侵害なぞ、報道されていませんでした。社会保障なども日本より進んでいるのだと思っていました。
ある日の赤旗記事を読み、疑問を持つようになりました。
「旧日本軍の残した爆薬が爆発し、多数の中国労働者が死傷。死亡した労働者の娘が進学を断念し、働かざるを得なくなった。これは日本国の責任である」と赤旗は書いていました。
私は、共産主義国家中国では、学費は無料とばかり思っていたので、これはおかしいと、初めて、中国の国民生活の実情に疑いを抱くようになりました。
そして中国の実情を隠している日本共産党にも。

私はブログ管理者ほどの知識や知識欲はありません。
また的はずれで、KYで程度が低いと思われるでしょうが、私は、中国はもっと分割された国家、民族ごとの国家が形成されるべきだと、直感しています。

匿名さんや花水木さんのように、頭脳明晰な方々が、新生中国を産み出されることを、日本の愚鈍な一民衆より、心からご期待申し上げます。

なんか年末にいろいろ書いて下さった方々がおられるようですが、とりあえず皆さんコメントありがとうございます。こちらも正月はいろいろアリでしたが、落ち着いたのでここらで私見を一言。
私はさしたる知識はありません。知識欲はそれなりにあるつもりですがw
正直言って「08憲章」は、外の国から見てわかるほどの、あるいはもっと進んで中共が倒れるほどの運動には発展しないと思います。それは運動が弱いということではなくて、今までにない十分広範囲な民衆を巻き込んでいるのですが、それ以上に中共の壁が厚いという意味で。その点はColgさんと同じく少し冷静に見るべきかと。
ネットでは胡錦涛勢力と対抗勢力との争いが、この運動への対応をめぐって綱引き状態だという話もあり、天安門の時と似ています。中国では全ての大衆運動が政争に利用されてきたと言ってもいいのではないでしょうか。まあ日本も似たことは多々あったので、多くの大衆運動は政争に利用されがちだと言い切ったほうが近いかもしれませんが。

ただ、だからと言って、このような拙ブログも含めた日本のネットの皆さんからも、悪政のただなかに住む中国民衆に何らかの応援の声を送って良いのではないか。そこは「08憲章」の次元がどうとかいう問題とは別次元のことと思います。ここにもたまに、日本語の堪能な中国の方が来られているようで、同じ特命希望様でも前に来られた「完全中共史観@チベット問題」な方もおられるので、管理人としては記事一つ書くにも複雑なのですが、お互い冷静な見方をすれば理解し合えるかと。
歴史を個人的感情から見ると、何かを見損なうかと思いますが、筍さんも「中国はもっと分割された国家、民族ごとの国家が形成されるべきだ」と核心に触れることを書いているので、いいのではないですか。

加藤哲郎さんが『葦牙』第34号所収の論文をネットで掲載しておられます。アントニオ・ネグリが、日本政府から「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)として入国を拒否された問題も書いておられるので、ぜひ読んでみて下さい。

http://homepage3.nifty.com/katote/ashikabi08.html

その冒頭で次のように書いてらっしゃいます。

「今日の中国(中華人民共和国、PRC)を「社会主義」と呼ぶとき、そこでの「社会主義」には、共産党一党独裁以上の意味は、含まれていない。含めようがない。かつての「社会主義」で含意された、生産手段の私的所有の廃絶も、資本主義・市場経済への協働主義的対抗も、医療や教育が誰にでも供給される平等主義と福祉も、もちろん労働者階級が職場の主人公として現場を自主管理することも、とっくになくなっている。」

私としては基本激しく同意です。この論文で加藤さんが最後に書いておられるように、中国を単なるバッシングの対象とせず、自分たちの足もとをよく見るためにも「二一世紀の行方を占う知的探求の、豊かな対象」として捉え、その情勢を建設的な議論で分析していくべきと思います。

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