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2009-01-12

派遣村の賛否両論(2)

(1)の続き...

TBSラジオの番組で、田中康夫氏が「派遣村」に疑問を述べたこともネットで話題になった。

実際に行ってみたら労働組合や政党の人が手伝っていたが、違和感があった。国に支援求める前に連合や自治労とかで何もやらないのか。連合の総評会館、自治労が所有する建物、日教組の建物を開放して助けようとしないのか。連合にはトヨタの社員の人たちも居るだろうが、そういう組合の人達がカンパして、「派遣村」の人たちを援助しようとなぜならないのか。田中氏の言っていたことは例えばそういったことだったと思う。

この批判は正論だが、これに応える動きもあった。

社民党は2日、派遣村からあふれた労働者を受け入れるため、東京・永田町党本部である社会文化会館の一部を寝場所として開放する方向で検討に入ったとかいう報道もあった(実際開放したのかな?)。民主党は宿泊場所となってきた厚生労働省講堂の使用期限が切れる5日以降の対応について同省と折衝。菅直人は、東京都中央区の区長に協力を求め、廃校になった小学校2カ所が開放されたとかいう話。じゃあ共産党は? 代々木の本部の会議室とかを開放したのかとか、そういう話は聞こえてこなかったが。(まあいろんな意味で(笑)都合悪いんでしょう)

このあたりの動きが多少でもあったから、じゃあ田中康夫氏の批判は間違っていたのかと言えば、そうとも言えないところが痛い。


そもそも、政治家は非正規雇用の問題を真剣に考えようとしているのだろうか。残念ながら時間と税金のムダ使いばかりが聞こえてくる。とくに8日の菅直人の衆院予算委員会での質問のアホらしさったらなかった。麻生首相が定額給付金を受け取るかどうか? んなこと必死で聞いて何になる!まったく遊んどんのかと言いたくなる。

総額2兆円の定額給付金は、2008年度第2次補正予算案に盛り込まれたかたちで、これを分離しろとか止めとけとかの与野党の攻防が続いている。菅直人は「派遣村」の集会で、「2兆円あれば、100万人の失業者に月17万円ずつ1年間支給しても賄える」と指摘したらしい。この発言の後、記者団に「定額給付金を補正予算案から切り離し、雇用・景気対策を急いで実現させるよう、通常国会で麻生太郎首相に迫っていきたい」と語ったらしい。国民のほとんどが疑問を抱いている定額給付金について、そんなものを実行するなら雇用問題に使えという案は正しいと思うが、この「100万人の失業者に月17万円ずつ1年間支給」という単純計算はとてもいただけない。月17万円もいかないワーキングプアな労働者もたくさん居る時代に、経済分析も踏まえたまともな雇用政策から2兆円の使途を提案するならまだしも、これではバラマキ、人気取りと椰揄されても仕方がないだろう。

で、その発言の後「派遣村」で1/5日以降の宿泊施設の確保に駆け回った菅直人だったが、結果先の「首相は定額給付金を受け取るのか」のアホらしいことに時間つぶしをしていたのである。自民党議員もまた、この雇用問題を最優先に考えず、わずかGDPの0.4%の資金で0.2%の需要喚起をあてにした定額給付金になぜこだわるのだろうか。どのみち、定額給付金で需要を促す効果はほとんどない。どうせなら同じ金を、解雇され明日の食費もないような人達のために使えば、かれらは確実にモノを買うだろう。そのための短期的な援助に月17万円ずつ1年間も支給する必要はない。何割かを失業者援助に回し、残りのほとんどをもっと抜本的な雇用対策、景気浮揚策に回すとして具体的数値を出したなら、多少でも支持率は上がるだろう。

共産党が代表的だが他の野党も、大企業の「内部留保」にこだわっている。内部留保の一部を取り崩せば非正規労働者の首を切らずにすむはずだと。しかしごく単純な計算上はそれが正論に見えるが、損益計算と現金計算の違いから内部留保は全て現金で存在しているわけではない。損益計算では計上されない設備投資や研究開発のある部分で、企業は自身の企業規模を拡大することを通じて、雇用規模の拡大の可能性をも広げていくので、単純に内部留保の現金部分を目先の雇用のために取り崩すことが、長期的には逆に雇用の規模を減らしていくだろう。 またこのことは、企業の信用とも関わる。経済の構造がグローバルではなかった20年30年前に比べて、今は企業が存立するための評価システムが大きく違う。不況下で内部留保は企業の存続のための資金でもある。資金力の弱い企業は、自己価値を高められず逆に経営が悪化する。そうなるとマジで非正規雇用を継続する体力はさらに低下する。また経営努力を見せて企業の評価を高めることで存続していこうとする面もあるので、非正規雇用を切るのもその過程でのことだ。だから非正規雇用問題を単純に何ヶ月たったら正社員にしろといった労働規制で切りぬければ、最終的には逆風が吹いて雇用状況はさらに悪化する。

そのことから考えると、内部留保を吐き出せを雇用政策として掲げることは、目先の雇用対策にしかならない。しかし実行を迫っても、企業の存続に関われば企業側の抵抗は強い。結果、それを言うのはいいだろうが、資本主義社会の中では遠い目標にならざる得ない。その遠い目標にこだわって、今できること、近くできること、あるいは長期的な雇用安定化政策や、失業者のセーフティーネット政策で戦わないなら、その政党は何をやっているのかよくわからなくなるだろう。


どのみち内部留保を使おうが税金を使おうが、一時的な金のバラまきでは長期的な雇用対策にはならない。経済を上向きにしなければ雇用は生まれないからだ。それは長期的な話にならざる得ないので、逆に生活困窮者への生活保護などのセーフティーネットをもっと考えるほうが、当座の問題ではないだろうか。「派遣村」で生活保護を申請する人達から見えてくるのは、生活保護自体が今の時代に合った安全装置の役目を十分果たしていないという事実。政府にしろ野党にしろ、セーフティーネットの問題にどれほど取り組んでいるのだろう。

あいも変わらず自民党が考え付くのは、今までも繰り返してきた大量のバラマキ政策だ。来年度の当初予算は史上最大の88兆円。国債の発行額は30兆円を突破する。企業の内部留保のような動きずらいものに目を向ける前に、不効率な行政機構にいくらの税金が使われているのか数字を出してみろ。その数字の数%を使うことで目の前の雇用問題はずっと前進できるのではないか。もし今よりもっと有効性のある勤労者へのセイフティーネット政策を実現しようとして、なおかつ消費税増税のような需要喚起に逆向する税政策を当面はとらないのなら、行政機構に使われている巨額の税金の流れを変えなければならなくなる。与党内も官僚もそのことに後向きなのは、公務員改革を骨抜きにされた渡辺元行革相が自民党を辞めるだとか、天下りや「渡り」の問題がまだまだ出てくることから明らか。

では、与党がだめなら公務員側の組合組織ぐらい、身を削ってでも改革を支持すべきだろう。しかしセイフティーネット政策一つでも税金から捻出するとなると、公務員にとっては自分達の側に落ちる経費を長期的に削減することにもなる。国公労連はそういう方向の政策を支持してくれるだろうか。

一般企業について言うなら、内部留保を言うより、役員、管理職の給与をカットして非正規労働者にまわせと言ったほうが正しいが、その場合は正社員の給与削減も視野に入ってくる。トヨタですら利益を上げられない現状のような経済状況では、企業側にかつてのような体力がなく、組織労働者の保護と非正規労働者の保護は両立しない。だからこそ中小企業では正社員の賃金を下げてワークシェアリングを導入する事例が出始めている。こうした問題でも、一般企業側の大手労働組合が覚悟を持ってのぞんでいるとは思えない。なぜか共産党までワークシェアリングには納得しないらしい。

派遣法などの規制緩和を許し、不安定雇用を増やした責任は連合にもあるのでは?と問われた連合会長は、「規制緩和を止められなかったという批判は受けざるを得ない。不安定雇用の人を最小限に抑えねばならないという雇用の原則を、強く主張し続けられなかったことについては、ざんげしたい。」と言う。( 「大企業の非正規大量解雇、許されない」高木・連合会長)

しかし連合は、 今年の春闘で8年ぶりにベースアップを要求するらしい。全労連系も賃上げ要求を前面に出す考えはいつもと同じ。既得権益の枠の中から「賃上げこそ最大の景気対策」と考える大企業の正社員たちは、「派遣村」に来てカンパやデモ行進を組織していても、本当に非正規労働者のことを考えているだろうか?

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コメント

>何割かを失業者援助に回し、残りのほとんどをもっと抜本的な雇用対策、景気浮揚策に回すとして具体的数値を出したなら、多少でも支持率は上がるだろう。

抜本的な雇用対策、景気浮揚策とは何だろう。

>経済を上向きにしなければ雇用は生まれないからだ。それは長期的な話にならざる得ないので、逆に生活困窮者への生活保護などのセーフティーネットをもっと考えるほうが、当座の問題ではないだろうか。

この意見には激しく同意。
セーフティネットでもって、不景気の間は、失業者には安定した生活を、のんびり送っていただく。
社会不安を鎮めるだけでも、多少は消費・雇用改善を上向かせる働きがある。その間に、大中小企業は技術・ビジネスチャンスの開拓を進める。いつ自分たちが失業し生活できなくなるかもしれないという国民の不安に対応することこそ、政府のやるべき仕事だ。

この文章から言うと「回す」というのは、税金を何かに注入するという発想に受けとられるかもしれないけど、そういう意味での財源注入で回復できる景気はわずかなものなので、まあ文章的には誤解を与えるかもしれません。
個々の分野を説明できるほど詳しくないけれど、項目としてあげれば、(1)官製不況をもたらす非効率な行政システムの解体と再構築、(2)非正規労働者を底辺に追いやる流動化ではなく、高齢になっても働けるような本当の意味での労働力流動化政策、(3)そしてそういう政策はある面競争も生み出すので、最低限の生活でも大きな不安無くある程度やっていけるようなセーフティーネット政策。お金を使うべきはそのへんでしょうかね。
特に(2)ですが、失業者の問題については、マル経の視点で見てる限りまるっと分かりませんが、社会の全体的な給与水準を下げることで失業率が緩和されるというのは、今の経済学では常識と、僕はいろんなところで入魂注入(笑)されてます。その考え方からいけば、正社員を保護するいろんな労働規制は経済的には逆効果なのではないでしょうか。だからこんな時代に賃上げをメインに掲げる大手労組はどんなもんかと思うわけです。

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