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2009-03-01

『カルマパ』〜ダライ・ラマ後継問題

もうすぐ3月。3月と言えば去年のチベット蜂起を思い出す。1959年3月10日は歴史的なラサ蜂起のあった日なので、3/10がチベット蜂起50周年の記念日にあたる。

今年は中国共産党にとって政治的な諸相の分岐点が重なっている。「建国60周年」であると同時に、「6・4天安門事件20周年」。そこにこの「チベット動乱50周年」が重なるわけだ。日本以上に輸出への強依存構造になってしまった中国は、世界金融危機の煽りで経済状況が激しく悪化しているらしい。その関係で国内での暴動も増えているとか。中国政府は国内の治安維持のため、北京五輪時なみの警察や武装警察を動員して警戒しているそうだ。当然周辺少数民族への警戒度も高くなっている。

このところチベットはどうなっているのか。情報統制でただでさえニュースがはいってこないところに、この2月から、外国人旅行客のチベット自治区内への立入を一時中止した糢様。(外国人客の受け入れ一時中止 チベット自治区 (産経:2009.2.19))

中国チベット自治区の地元旅行会社は19日、外国人旅行客の自治区内への受け入れを一時中止したことを明らかにした。 昨年3月に区都ラサで起きた大規模な暴動から1年となるのを控え、警戒態勢を強めている当局の指示を受けた措置とみられる。受け入れ再開は4月以降になる 見通しという。
 チベット自治区では今年1月、1959年に中国政府が「チベット動乱」を制圧し同地域の統治権確立を宣言した3月28日を「農奴解放記念日」と制定。チベット民族の住民の間で反発が強まっている。
 昨年の暴動後もチベット自治区では、中国人の団体観光客や外国人旅行客の受け入れを一時中止。中国人団体客は4月下旬、外国人客は6月下旬にそれぞれ受け入れが再開されていた。(共同)

1959年のラサ蜂起を弾圧した日を「農奴解放記念日」と呼ぶんだから救えない。

ちょうどブログを始めてしばらくして起きた昨年のチベット蜂起。日本の共産党が、実質中共の情報タレ流し状態だったことに頭きたのも手伝って、夢中になってあちこちのブログやニュースを読むようになった。中国からのニュースはなくても、そちら方面専門で情報収集している人達が居るので助かる。だから治安維持に神経質になっている最近の中国の状態は、他力本願で行く。例えば「日々是チナヲチ。」の次の記事など参考になる。

チベット動乱50周年」とは、ダライ・ラマ亡命から50年たったということでもある。ダライ・ラマは今年73才。昨年は軽い健康問題もあったが乗り越えて、まだまだ元気なのだそうだが、当然自身の後継問題には深く憂慮していて、亡命政府には対策を講じるよう前々から指示を出してきたという。

ベルナルド・ベルトルッチ監督の映画「リトル・ブッダ」で描かれていたように、チベット仏教のしきたりでは、ダライ・ラマの後継者は、高僧たちが占いや夢や自然現象などを解釈して、生まれ変わりとされる赤ん坊を捜し当てることで決められる。ダライ・ラマ自身もそうした伝統に則ってダライ・ラマとなった。

しかしこの方法では、発見された赤ん坊が成人して指導者として育つまでに、20年前後の月日を要する。亡命政府と国内のチベット運動組織を壊滅させたい中国共産党にとっては、20年とはありがたい期間すぎる。この問題を少しでも解決させるために、昨年ダライは、自分の生存中に生まれ変わりを選ぶことができるというふうに規則を修正したそうだ。西洋的な時間概念に浸された我々には、生まれ変わりが前世の生きている間に見つかるなどという理屈に矛盾を感じるが、チベット仏教の時間感覚は独特で、このことも問題にならないらしい。

これに対して中共は、後継者の決定権は中国にあるとしており、ダライの方針と真向から対立している。ただいずれにしても、ダライの生まれ変わりが彼の生存中見つかったところで、もう高齢と言っていいダライ・ラマなので、ダライの死後何らかの政治的空白期間は避けられない。現存する活仏にダライに匹敵する者はいない。もしこの空白期間に何も手を打たなければ、中国は自国内のみならず、世界中に散らばるチベット運動家とその組織を解体しようとするだろう。

このダライ・ラマ後継問題をめぐって、Newsweek09/3・4号にカルマパという名の青年を取材した記事が載っている。(以上状況解説および以下は記事より要約)

カルマパは現在23才。1985年生まれの若者だ。遊牧民の子として生まれ、81年に亡くなったカルマパ16世の生まれ変わりとしてチベット東部に発見され、7才で活仏となり、カルマパ17世となった。ダライ・ラマは最大宗派ゲルク派の指導者だが、カルマパはそのゲルク派のライバルであるカギュ派の指導者である。決まりによって宗派が異なるカルマパは、ダライの後継者にはなれない。しかし、ダライを崇拝する若き指導者カルマパに対する人々の期待も大きいようだ。

カルマパは、中国国内に居た頃、ダライ・ラマに敵対するよう中共から強制をされた。そのことがきっかけとなり多くのチベット人と同様に、雪のヒマラヤを超えて亡命し、ダライのもとに身を寄せた(現在600万人のチベット人のうち約15万人が同じようにして亡命している)。

昨年の蜂起では、中国政府に「高度な自治と文化的自由」を求めるダライ・ラマの主張はおとなし過ぎるとして、チベット人の中にも過激な変革を求める人々が居るのを知った。過激とは言え、それはとても妥当な感情だと思うのだけれど、カルマパは若いので、こうした過激な一派のチベット人からも支持を得ている。

「どんな生き物でも、何度も何度もくり返し追い詰められれば、怒りを爆発させるしか手段はないものだ」

昨年の蜂起にも、そんなふうに理解を寄せるカルマパは、欧米などに散らばるチベット人活動家からも支持されているようで、チベットを支配しようとする中共に対抗できる新しい世代の代表とも言われているとか。いづれ訪れるダライの死後、正式な後継者が成人するまでの暫定的な宗教指導者として、カルマパ17世が活躍できるなら、空白期間に中共につけいるスキを与えないための、有効な政治指導者になるだろう。

これからしだいに現実化していくダライ・ラマの後継者問題。『カルマパ』という若者の名前を覚えておいたほうがいいかもです。


以下カルマパ亡命に至る経緯について、ダライ・ラマ法王日本代表部事務所の過去記事から


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