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2009-04-05

日本の台湾統治について(NHKスペシャルから)

今日放送されたNHKスペシャル「シリーズJapanデビュー」。このタイトル何とかならんのか? と思ったり...。

第一回は戦前の日本の台湾統治について。

こういうテーマでシリーズものをやると、イデオロギー的に偏らないよう、編集者もかなり神経を使うはず。ところが見た感想としては、映像自体はまあまあ丁寧に作られているほうじゃないかなと思いつつ、その内容は...これから微妙な摩擦を呼ぶ中身ではないだろうか。

日清戦争で勝利し、台湾を最初の植民地として手に入れた日本が、欧米列強と肩を並べるまでに強国化していった背景と、実際の台湾人の人達がどういう扱いを受けてきたのかを交互に解説。合間に、現在も生きている80才以上の台湾の老人たちの生の声を挟み込む構成。

偏らないように配慮しても、この手のテーマはある種の人達から見れば必ず偏ってみえると批判が起きるだろう。番組が全てを公平に取材しているかどうかは慎重に見たいところだが。

番組中盤に出てきた「人間動物園」。当時植民地の先住民族をヨーロッパの博覧会に連れて来て、見世物として展示した西洋のやりかたにならって、ロンドンで開かれた「日英博覧会」に日本は台湾の先住民族を見世物として公開した。当時めずらしい裸族の写真として売られた絵はがきに載っていた実際の曾祖父などを見て、現在も存在するその村の子孫の人達が、何ともやりきれない悲しさを滲ませていた。ただ、この「人間動物園」という呼称は当時使われていたものとは思えない。

戦前、台湾総督府民政長官であった後藤新平の言葉、「ひらめの目をタイの目にすることはできない」とは、植民地下の台湾人を日本人化することができない難しさを語った長官としての苦悩の言葉だが、すぐわかるようにその言葉自体に差別感が滲み出ている。しかしそう言いながら日本がとった統治政策は「皇民化」=「同化政策」であった。

一般論としての植民地下の「同化政策」とは、結局他民族の文化を破壊し、自国の文明をより良き高きものとして押しつけ、いかにも遅れた民族を開化させてやっているように見せながら、差別の構造は温存強化していくことにすぎない。しかし戦前の日本のそれは、他民族に対して完全に破壊的なものとは言い難い。戦中ドイツなどで行われたことに比べると、日本は「同化政策」を徹底するほどに、台湾の人達に日本人と同じ教育をし、日本人になれというものではなかったのだろうか。そこにあるのは、負の側面ばかりだろうか?

台湾の道教寺院はことごとく破壊され、その木材を使って神社や鳥居が建てられたと言う。明治維新直後にある意味同化された琉球の人達を、教育者として大量に台湾に送り込み、日本語の話せない者はバスにも乗れないといった「皇民化」を進めたというのは史実なのだろう。

日本人と同じ小中学校に通わされた台湾の子供たちが、弁当のおかずの豚のしっぽ(台湾食)を日本人の生徒に笑われ、母親に日本式の卵焼きやたらこの弁当にしてくれとせがんで、母親たちは日本の料理を覚えるのに苦労したのだそうな。韓国統治に比べて平板に語られやすい台湾統治でも、その初期には強い抵抗運動があり、多くの台湾人が死んでいること。50年にも及ぶ日本の植民地支配の中で、台湾人の議会設置を求める非暴力運動が14年も続いたこと。彼らが求めていたものは独立では無く、日本統治下における台湾人による自治だといった話、今中国大陸で起きている問題と重なって聞こえる。

誰もが知るように、結局太平洋戦争集結によって日本の台湾支配は終わるが、50年の植民地運営と「皇民化」の帰結は、21万人の台湾人日本兵と、その死者3万人であったと。

戦後になって、学問の分野では非西洋型の思考が模索された。ヨーロッパの近代以降の科学文明を優位に置く思考は、偏っているとされたからだ。しかし日本人がそれをヨーロッパ固有の現象のように語るとすれば、過去の歴史の展開と一致しないことになる。強国が自身を文化的にも優れた者として定立し、支配された民族を遅れた者と見なすのは、植民地を支配した国家に必ず見られたロジックである。欧米列強に追い付き追い越せと疾走していた日本も同じ穴の貉であったことは事実だろう。

ただ帝国のロジックは、結局文明そのものが持つ両義性の現れなので、何もかも全否定するとまた偏ってしまう。普段PCのパーツやサーバ・ネットワークでお世話になっている今日のIT先進国台湾の姿は、大陸とは別に資本主義の道を選んだことなしにはありえないが、それも日本の植民地支配で創られたインフラなしには考えられなかっただろう。結局、歴史は正負両面から見なければ見えないということなのだ。この点では、今日のNHKの番組は多義性を欠いていると見ることもできる。戦前の日本統治の負の面ばかり流せば、公平性に欠けることになるだろう。

よく金美麗のような人が「今日の台湾は日本のおかげ」「子供の頃は日本の兵隊さんが大好きだった」などと言い、片方で「日本には格差が無い」などと言う。貧乏人から見れば、それは成功した台湾人から見たある一面の真実であるにすぎないのだろう。ただ、こういう見方の台湾人は多くて、彼ら親日的な台湾人たちが居たからこそ、日本と台湾は経済的な協力関係でやってこれたという面もある。金美麗のような意見は、単なる彼女の頭の中のイデオロギーでは無くて、戦前の統治のプラス面を背景にしているある種の台湾人の世論でもあり、そのことは金美麗が好きか嫌いかと関係ない。

一方番組に出てきたように、子供の頃を思いだし「日本人め、バカにしやがって!」と昨日のことのように涙ぐむ80代の台湾人も確かにいるのだろう。我々から見れば、彼らの日本語のうまさに舌を巻くが、本人たちは、難しい感情や論理を台湾語で書けず、つい日本語で書いてしまうことに悲しさを感じているのだという。しかもある台湾人医師は、そんな自分に施された少年時の同化教育の影響を、明確に「ブレインウォッシュ=洗脳」と呼んだ。しかしそう言う彼が、日本を語る時、恨みつらみが全てだとは聞こえないのが不思議だった。映像を見る側にすれば、日本人にバカにされたと言いながら、なぜ彼らは今もそんなに流暢に日本語を話すのか。日本人よりおそらく民族意識が高いだろう彼らが、ほんとに日本を憎んでいるだけなら、まず日本語を捨てるだろう。

教育勅語を暗唱できる元台湾人日本兵の老人には驚いた。関心ばかりしていないで、彼らの目の奥にある悲しさも想像しなければ、歴史の正負を捉えたことにはきっとならないのだろうが、そこを強調して終わっているNHKの番組構成は説教がましさが残る。なぜか私にはそんな元台湾人日本兵の姿が、日本への恨みというよりも、自分を中途半端に捨てて去っていった恋人への未練のようにも見えた。軍歌を唱う彼らが、今も日本の軍歌を唱えることをなぜか自慢したくてしかたないようにも見えたのだ。そこにある彼らの心の複雑さや多義性は、映像には写っているのだが、番組は何も語ろうとしなかった。本当はそこに複雑さや多義性があるなら、なおさら今日まで築き上げた台湾との友好関係を維持していくべきだ。いつまでも自虐史観に囚われてないで、すでに存在している経済文化関係を平和的に発展させていくべきだ。どうもそこらへんの視点がこの番組にあるかどうかは、初回を見た限り今後も微妙である。

植民地のロジックはどんな国にも共通していると考えたところで、中国共産党のチベットやウイグル支配も同じロジックであることを考えた。中国の周辺民族支配を考える時、日本もまた今の中国共産党と似たようなことをやってきたのだということを忘れてはならないだろう。しかしだからと言って、過去の自己反省から今やられている人権抑圧への批判の口を閉ざすことはおかしい。確かに一方で、戦前の日本に自分がもし生きていたとしたら、今の中共批判のような言葉を軍国日本で吐けるのかという問題の、重さや難しさも考えてしまう。そこを視野に入れておかなければ、他国非難が自分のルサンチマンのはけ口に堕してしまうだろう。しかし、ならばなおさら、歴史認識がルサンチマンにまみれぬよう、せめて台湾のような親日的な国に対して、お互いが共感できる歴史観を模索すべきである。そういう意味で、今夜のNHKの番組は、一面的な歴史観を流しているだけではなかったか。

番組の最後でフランスの歴史家が言っていたように、他民族と共有できる歴史認識を持つことは非常に難しい。しかし、それ抜きにお互いが理解し合うこともできない。北朝鮮のように、理解の共有をかけひきに使う詭弁国家があるから、その難しさは何倍増しにもなるし...。

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コメント

はじめまして、
NHKスペシャルでブログ検索から来ました
ひどい編集の偏向番組だったが率直な感想です

そうですね。
今どきああいう視点だけで番組をまとめちゃっていいのか? というのは思いました。映っている老人たちの感覚が、大陸の反日感情とはかなり違うんじゃないかと思いましたが、番組はそこに踏み込みませんでした。

今回、楽しみに、JAPANデビューを見ましたが、
あまりに歪曲し、統治時代の悪いことしか報じてませんでした。 こんな反日番組を、NHKが企画放送してよいのかと思いました。 
 

一方で「日治時代」の功績ばかりを強調する『某○○○友の会』メルマガのような
論調があることを考えると、この番組と両方を観ることでバランスの取れた
評価ができるきっかけになるような気がします。
知人は日本人の若者と飲む機会があると「なぜ日本は我々を見捨てたんだ?
君はどう思う」と意地悪く質問。昔、わたしもやられたクチですが・・・

あの番組で取材を受けた台湾の老人は、NHKが歪曲して、意図的に編集して、流されたことに、相当怒ってるみたいですよ。このような番組の作り方からすると、番組の意図についても、 再考の必要があるかもしれませんね。

> 相当怒ってるみたい
ほんとにそうらしいですね。
それでも視聴者に何の説明もないなら、番組の意図は自虐史観を広めることだったととられても仕方ない。

この映像をぜひ見てください。米国TV局ディスカバリー・チャンネルが制作した「知られざる台湾・台南」です。日本統治時代の台南市をきちんと紹介しています。NHKと入れ替えた方がよさそうですね。

http://www.youtube.com/watch?v=YG9HvrgwmaM&eurl=http%3A%2F%2Fwww%2Eyoutube%2Ecom%2Fmy%5Fvideos%5Fedit2%3Fns%3D1%26video%5Fid%3DYG9HvrgwmaM&feature=player_embedded

興味深い内容ですね。特に当時の日本人建築家が設計した建物は、日本が残したインフラの良い例。日本人はほとんど知らないよな、こういうの...。ちょうどYoutubeでの反応を漁っていたところだったので、別記事でリンク貼りたいと思いますw

ローバー(豚の角煮)、豚のしっぽは、今でも台湾の高級食材。
コラーゲン豊富でおいしい。

番組のおじいさん、大変なエリートだったんだな。

当時の日本人の弁当に卵焼きがはいっていれば、大変なごちそうだったろう。
普通は切り干し大根に梅干し。それにひじき、ワカメなどの「海の雑草」

番組のおじいさん、ユーモアでしゃべったんじゃないだろうか?

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