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2009-04-25

『ウェブはバカと暇人のもの』中川淳一郎

41xusgyxntl_sl500_aa240_ この本、細かい点でいくつか異論はあるし、760円出して買う必要があるかと言えば、ネットで書いてくれればよさそうな内容なので微妙。ただ、 ネットの先進性をやたらと持ち上げる梅田望夫氏などの著作に比べれば、私が感じるネットの世界の実感は中川氏のこの本のほうに近い。

「続きはWEBで...」というCMを見て、本当にPCを立ち上げて見に行った人がいったいどれほど居るだろうか? そんな著者の疑問は私も大いに感じてきた。

TV業界はネットを畏れ、かつなめている。いくら梅田望夫氏のようにWeb2.0の素晴らしさを伝道したところで、それは技術畑の人間どうしのこと。世間の人の大多数は、あいかわらずTVから情報を得る。そしてTVがくだらないのと呼応するように、ネットの中の多くの人の関心事も、例えば「スイーツ(笑)」てなネット言葉に表現されているように、ほとんどはどうでもいいことだ。

著者が言うように、今だネットはTVに勝てておらず、「ネット発◯×」を企業がどんなに創り出そうとしても、たいした話も出てこない。逆にネットが人々の関心事を反映しているのだとすれば、そこに見えるのはネットがTVに従属している姿勢だろう。いい例がYahoo検索の急上昇ワードランキングで、今日のそれを見れば、草なぎ君関連のニュース発の単語、「笑っていいとも!」関連、「秘密のケンミンSHOW」で紹介された飲食店の名前、人気漫画原作のドラマ「ライアーゲーム」とか、たいていはTV発の単語と、どうでもいい話題が並んでいる。

著者の意見では、ネットはこのままずっとTVに勝てないかのようだ。しかしそれは、TV局のネットに対する消極姿勢を割り引いて考える必要もあるだろう。つまり将来はどうなるかわからないということだ。ただ、ちょうどTVが電波利権を囲い込んで携帯電話を追い出しているように、ネットとの融合などといった、さも先進的なビジネスモデルに取り組んでいるように見せながら、実はネットをずっとTVに従属させておきたいという局の思惑は、当分の間続くこと間違いない。だから 「続きはWEBで...」はやたらと見るが、WEBが発信地の「続きはTVで...」は聞いたこともない。それに「続きはWEBで...」と言っても、ネットの本質を知らず、竹にプラスチックを繋ぐような表面的なマネージメント手法になりがちで、「続きは..」の向こうにたいしたコンテンツも無いことがほとんどだ。

ただ、TVのこうした消極姿勢には萎えるけれども、じゃあネットはそんなに素晴らしいものか? ある種の人達が言うように、ネットが革命的な何かを起こすかといえば、ある程度幻想だとも思う。

ブログにしたって、そこに生きがいなんぞ感じているのはどうだろうか? ブログに費す時間など最低限にして、関心のあることについて、本を読んだり、考えたり、人と喋ったりする時間を増やすほうが、よほど有意義だろうと、ブログ開設1年ちょっとの私もやはり思っている。

猫も杓子も携帯電話をしている世間は、皆が目が悪くなり、本を読まなくなってきているが、ネットも似たような効果があって、何でもネットに依存して、いい加減な情報を信じて、くだらない書込みに一日をつぶしていては、自分をムダにすごす時間が多過ぎる。実際TVに従属した形で人々がネットに集うかぎり、ネットの中にはTVを批判できない、くだらない世間話が溢れている。

著者は、ネットとはその程度のものであって、それ以上でもそれ以下でもないと言う。実際ネットに入って過ごす時間が長い我々のような人間には、そんな著者の言葉が説得力を持つ。ネットには、年を経るごとに雑然としたくだらない情報が増えてくるが、逆にその適当さと混乱と低次元が本質だとも思えてくる。

ネットの中は、多くが面白ネタと気まぐれで動いているので、何かへの関心は自然発生的に生まれるしかない。それがネットには本質的なことなので、そこを理解できない企業がネット発のヒットを生み出そうとしても、たいてい失敗する。それはある意味、大企業のマーケティングなどに流されない、人間の正直な心を反映している部分でもあるので、誰かがコントロールできないというネットの本質は、ずっとそれでいいとも思う。

ある意味で「ネットはあなたの人生を何も変えない」という著者の言葉に共感。「ウェブはバカと暇人のもの」かどうかは使い方もあると思うが、自分を高めなければネットだろうと何だろうと、何も生み出せないのは事実だろう。

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