« 香港の追悼集会に15万人 | トップページ | 出ましたw「勇気ある」幸福実現党のチラシ »

2009-06-18

不況なのに...、議席減らすヨーロッパ左翼

昨日発売の「Newsweek 6/24号」に、イギリス労働党下院議員、元欧州担当相のデニス・マクシェーン氏が次のようなタイトルで記事を書いている。

左派の夜明けはなぜ来ない

  • 「ヨーロッパの左翼政党は『資本主義の危機』を生かせず、欧州議会選でも議席を減らす重症ぶり」
  • 「ヨーロッパの多くの国々で左派政党の低迷が止まらない。古臭い主張ばかりを繰り返し、有権者からも見放されつつある彼らが、現在の経済危機という追い風を生かすためには、いったい何が必要なのか?」

とストレートな問題提起が目を引く。社会民主主義政党とはいえ、ヨーロッパ左翼に身を置いてきた人による積極的な自他批判だ。

日本の某有名左翼政党の、年老いた元委員長によれば『マルクスは生きている』そうである。この元委員長の新刊本によれば、BBC放送のアンケートでマルクスが偉大な思想家第一位とされたと言うのだが、よく読めばこれは1999年の古い話w   2009年の現在も、「日本でも世界でも、『資本主義の限界』が実感され、『この世界の前途をどう見るのか、マルクスの意見を聞きたい』という声が広がっています」とのことだが、後で出てくるマクシェーン氏の別の記事を見ると、ヨーロッパで広がっている声は、既存の伝統的左翼政党よりも急進派・強行派の左派に流れている。少なくとも今回のマクシェーン氏の記事を読む限り、ヨーロッパでそれなりの歴史を持つ左翼政党に関してはずいぶんと話が違うじゃないかと。

確かにEU(欧州連合)27カ国のうち20カ国は、現在右派の政治家が政権を握っている。仏のサルコジ、伊のベルルスコーニ、独のメルケル等はみな右派系保守勢力を代表している。EU4大国で後に残ったイギリスだけが、左派首脳を頂く。しかしそのゴードン・ブラウン首相も政権維持が危ないらしい。

マクシェーン氏は、現在の左派勢力の後退をもたらしたのは、他でもない左派自身の運動のある程度の成功であったと書いている。労働組合の影響力の強化、福祉制度の整備、そうした左派の成果が皮肉にも古典的貧困を無くし、階級鬪爭の質的変化を招いたと。

また欧州左派が一定の成功を収めた背後では、世界的な金融危機と流通経済圏の拡大が進み、大量の移民やパートタイマー労働者を生み出した。これらは古典的組合活動に吸収されにくい、新しいタイプのプロレタリアートであると書いている。このあたりは移民問題が欧州ほどには激化していないわが国でも、派遣労働者の解雇という形で同質の問題を抱えている。連合などが派遣やパートの組合員加入が増加していると言っても、その派遣やパート労働者の実際の全体数から言えば微々たるものにすぎない。特に解雇などで貧困化していく若者たちに、アナーキズム的心情が広がっているとされることもあるが、アナーキズム的心情の包摂は、組織左翼が最も苦手とする分野である。

マクシェーン氏は、ついこの前同じこのNewsweekに、「左派のうねりが怒れる欧州を覆う」という短い記事を書いている。タイトルだけを比べると今回の記事と一見矛盾した内容に思えるが、前回の記事もよくよんでみると、既成の左翼系政党の話ではなく、左派的な要求を掲げる大衆運動や、有権者に相手にされなくなったフランス社会主義政党の空白を埋める若い「反資本主義新党」の話だ。これも見方を変えれば貧困層のアナーキズム的心情を左派的新党や左翼系大衆運動が取り込む一方、サルコジ内閣に入閣した既存の左派やリベラル派政治家が、逆に国民の信頼を失ってきている姿を反証しているふうにも見える。

ヨーロッパの左派も、右派政党に比べると大衆的なカリスマ性のない指導者が多いと言う。しかも未曽有の不況下という滅多にない追い風にも関わらず、有効な経済政策が打ち出せない。金融危機に対し、現代の市場原理主義につながる新古典派の均衡理論が有効でないのはもちろんだが、古典的マルクス主義経済政策に頼ってきた左派もまた、具体的な政策を打ち出せないのはどうにもならない(日本での左派の内部留保論などもその典型)。

日本の労働組合は「正社員クラブ」などと揶揄されるが、ヨーロッパでは賃金が比較的高い白人労働者階級には、移民排斥主義者が多いといわれる。そうして不況の中で労働者間の利害の競合が生じていることもまた、従来型の階級鬪爭を難しくさせている主要な因子である。

移民やパートの求める救済政策とは、まず第一に"雇用"にきまっている。また雇用政策こそがやや安定した白人労働者階級と移民やパート労働者との利害を一致させるポイントなのだが、左派政党は過去数年間、従来型のアメリカ批判、ブッシュ=市場原理主義非難を繰り返していただけだったので、さらに支持を失ったと言う。つまり「抵抗政党のままで満足していた」と言うことだ(「確かな野党」とかいうスローガンを思い出した)。

雇用を創り出すのは産業界だが、大企業や銀行への反感が強まる欧州でも、左派は産業界寄りに変身していかなければ生き残って行けない事情がある。しかしその方向はまた、左派が左派ではなくなる道でもある。ヨーロッパには実際にそうした前例がある。西ドイツ初の社会民主党出身の首相であったウィリー・ブラントや、スペインのゴンザレスは、産業界と強く連携した結果、出身政党的には反米主義でありながら、NATOを積極的に支持した。

ただ、左派政党退潮の原因は、国内の経済政策で支持を失ったことだけではない。国際政治面でも左派は民意が読めなかったと言う。左派がせっかくイラク戦争反対を掲げてきたのに、今まで有権者が選んだのはドイツのシュレーダーなどの戦争反対派ではなく、ブレア英首相やベルルスコーニなど、フセイン壊滅支持派であった。

国際政策で民意が左派に流れない原因は、日本の左翼の問題と酷似している。

「最近は、左派が運営する市場経済の成功例として中国を好んでたたえる。ただし、政治犯の収容所や民主活動家への嫌がらせにはほとんど触れない。30年代にソ連のスターリンが社会主義国家を建設しているとたたえられたように、現代の左派は筋違いの人々を筋違いの理由で持ち上げ、有権者の主流からの評価を下げている

くどいようだが、これは英労働党の議員の言葉である。「ソ連は正しい社会主義では無かったので忘れよう。しかし中国は著しく成長し、社会主義の未来に希望を与えている」として、中共の人権抑圧に一言も触れない新書本を書いた、先の日本の元委員長にも、これぐらいの客観的なコメントを書いてもらいたいものだ。

ヨーロッパの左派が政権を取れない原因は、同じ左派勢力どうしでの足並みがそろわないこともあると言う。欧州議会の委員長選挙では、イギリス、スペイン、ポルトガルの左派政党は、右派のバローゾの続投に手を貸した。もっと痛い話だが、ドイツ社会民主党は、90年連合・緑の党と友好関係にあるために、温室効果ガス排出量削減のための有効な選択肢である原子力発電について、言及することもできない状態にあると言う。

ただ、マクシェーン氏も左派には何の未来も無いと書いているわけではない。ドイツとオランダでは社会民主主義と中道右派が不安定な連合政権を組んでいるように、未曽有の不況下では中道右派もまた、ある程度の社会民主主義的政策を取り入れなければならなくなっているからだと言う。

イギリスで保守党のキャメロンが減税と公共支出の削減をあえて主張しないのは、保守派が政治の主流に戻るためには、社会民主主義の政策も採用しないわけにはいかないからだ。

左派の再生は、昔から社会民主主義モデルの主要な改革者である北欧諸国から始まるかもしれない。

ただし、社会民主主義的な政策の中身がオールド・ケインジアンな政策では今日の経済危機を乗り越えられないことは、ヨーロッパの右派も分かっていることなので、さらに構造改革的な提 言を左派ができたうえで右派との提携を模索していけるなら左派が生き残る道も生まれるだろう。しかし、そもそも左翼政党の政治家はそのような思考訓練をしてこなかったから左翼なわけで、我が国の左 派は言うまでもなくヨーロッパのそれも同じ様相だ。(もっとも日本の保守党政権も、オールド・ケインジアンな政策の問題点を分かっていないようだが)

さらにマクシェーン氏が書いているのは、日本の左派には望むことも困難かもしれない課題である。

社会民主主義が再び中央舞台に上がるためには、単独であれ強力な中道政党との連携であれ、中道に再び歩み寄らなければならない。シングルマザーや外国人に対する軽蔑的な態度、EUに懐疑的なナショナリズム、そしてヨーロッパの保守派が唱える富裕層を優遇する経済政策などを嫌う政党とも連合を組み、進歩的かつ改革的な政治を進めていくべきだ

社会民主主義が1世紀以上前に伝統的な自由主義と決別したのは、リベラル派が労働者と寛大なビジョンを犠牲にし、狭い中流階級の利益を守っていたからだ。

しかし左派は、古い皮を自ら脱ぎすてなければ歴史は味方してくれないと、そろそろ認めなければならない。最優先すべきは経済成長で、再配分はその次だ。産業界や外国製品、外国人労働者を敵と見なせば左派の攻撃的な分子は喜ぶだろうが、同時に有権者からは否定され続けることになる。

しかし中道との連携や実効性ある政策、国民の納得できる経済的ビジョンなど、言うは簡単だが、歴史のある左派政党ほどまず組織の内部改革がされなければどうにも動きがとれない。マクシェーン氏はこうも書いている。

現代の左派も、自分達の政党の中枢に本音をぶつける勇気が必要だ。彼らの政党は今も労働者を代弁すると主張しているが、実際は大卒エリートの集まりであり、皆フルタイムの職業政治家だ。マルクス主義を学んだ党幹部が定義する「労働階級」はもはや存在しない。そうした現実を自ら認めたほうがいい。

「実際は大卒エリートの集まり」「皆フルタイムの職業政治家」これらの言葉が、日本の共産党にも何とあてはまることか。おもわずかつて金子満広副委員長(当時)の息子が日本共産党を離党した時、雑誌でこう言っていたのを思い出した

志位和夫書記局長(当時)のように大学時代から活動に専念してきた実社会経験ゼロの純粋培養候補者がズラリと並んでいる。社会生活上の苦労や職場の人間関係を知らずに机上の理想論を並べ立てる候補者が、選挙民から支持を受けるはずはない

この核心を突いた批判も、ごくごくノーマルな労働者感覚からした左翼組織批判ではなかったか。

具体的政策を打ち出して国民から支持されるためには、まずは組織の内部改革をするしかないのはヨーロッパも日本も同じ。ただし日本よりも、イギリス労働党の幹部のほうが、まだ現実の空気が若干読めているようだ。

« 香港の追悼集会に15万人 | トップページ | 出ましたw「勇気ある」幸福実現党のチラシ »

コメント

ヨーロッパの左翼も苦戦ですか。
東ヨーロッパの民主化、ソ連崩壊、から世界恐慌という、一大経験をしているわけですから、ヨーロッパ社会民主主義の新モデル、成功モデルというのを出してもらわんと、世界が修まらんのやないか。

日本の共産党は、すでに中央は、死に体というように見える。党本部ビルと、複数の主は、その象徴かもしれません。

考えようによっては、産業界にコミットできて、北欧型の社会民主主義に流れる方が、頭ガチンゴチンの日本の共産党よりマシかもですw

党幹はそれなりに職場の苦労もあるだろうが、末端党員の苦労は知らずか、眼をそむけているか、どっちか。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/120253/45373213

この記事へのトラックバック一覧です: 不況なのに...、議席減らすヨーロッパ左翼:

« 香港の追悼集会に15万人 | トップページ | 出ましたw「勇気ある」幸福実現党のチラシ »

aBowman

別荘はこちら

  • Marbles2
    音楽、美術、映画、本など趣味的なページはここに移転しました。考えるのが面倒だったので、タイトルは単に2です。

ウェブページ

2018年2月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28      

mail

  • 82pkdick@gmail.com

最近のトラックバック

無料ブログはココログ