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2010-02-20

障害者のいない社会は幸せか??

阿久根市竹原市長のブログでの発言に端を発して考え始めた問題をさらに。

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医療的対象と認識されるまでの障害は、「つんぼ」とか「ちえおくれ」といった放送禁止用語に残っているように、社会的差別の対象でしかなかった長い歴史を持っている。だから少なくとも障害について、何が障害であるかということ自体、高度医療とそれを支える科学の力で分かってきたことではないか。

確かに障害者問題は、医療の問題だけでなく社会の文化や価値観の問題とつながっている。だから鹿児島の某市長がこの問題を、あるべき社会作りの問題として取り上げたがるのはわからなくはない。

ただ障害者を「増え過ぎてはいけない存在」と捉える考え方は、彼らを価値の無い者、"社会がしかたなく養っているお荷物的存在"と暗黙裡に捉えているということだろう。そこの価値判断を無意識的前提としたままで、いくら議論したところで何も噛み会わない。あるいはその価値観のまま「社会の設計」とか「コントロール」など議論されれば、現に生きている障害者にとって気持ちが悪い話だ。

障害者を"役に立たない者"とする価値観は、利益至上主義な社会の価値観を前提にしていることを忘れてはならないと思う。障害があるゆえにその人間の価値が低いと捉える社会は、障害を持たない人間も含めて序列のきつい、バランスの悪い社会だろう。それゆえに障害者に対する価値観は、その社会全体の現状を映す鏡でもある。そこが「近江学園」を創設した糸賀一雄の言う、「この子ら世の光に」という言葉であって、「この子ら」ではない理由だ。

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でも実際は......

全ての人間にとって序列競争の無いバランスの良い社会をつくるなんて、そんな簡単なことではないのだ。今までの人間社会の全てが、序列のきついバランスの悪い社会だったのであり、むしろその中から生み出される競争(闘争?)によって、社会が進歩してきたのではないか。

社会の序列主義が無くならないから、障害者問題が全ての序列主義を映し出す鏡になるのであって、ひょっとしたら永遠にそうなのだ。

人は障害を持って生まれてこないに越したことは無い。だが、交通事故や戦争の被害者を考えれば分かるように、障害者は社会的にも作られる。だから社会的にも作られるこの障害を、某市長のように、死と同列の自然の運命と捉えるわけにはいかない。またすでに書いたように、医療科学の進化が、全ての障害の社会的原因を明らかにしたところで、それが社会の倫理観を変えるほどの影響は持てないだろう。逆に未来の医療科学が突き止めたものを、社会の側はその倫理観を変えずに単に利用していくだけかもしれない。そうなる理由は結局、社会の中の序列主義を無くすことがたいへん難しいからだ。

資本主義の歴史上、障害者に対する価値観は都合良く解釈されてきた。景気が良く労働市場に余裕があれば、障害者は無用な代物とされ、不況で安い労働力が欲しければ、障害者も役に立つとされる。「障害者にも発達する権利がある」という美しい発言の裏側に、それを言う人しだいでは「障害者をうまく使って利益を上げたいだけ」という本音が隠されていることもありえる。障害者は労働予備軍の最底辺で人数調整される存在となる。それを計算にいれた社会の設計や効率すら取りざたされる。

...しかし、問題はこんなマル経的歴史観に留まらない。

資本主義が障害者の差別を作り出すというのなら、資本主義に代わるものを提示しなければならない。それができないのなら、資本主義の中で少しでも改善できる方法を作り出していくしか道はない。資本主義が生み出す序列主義の弊害の最底辺に障害者問題が位置するのだから、資本主義と障害者問題を切り離して考えることはできず、それは結局その資本主義の中で生きる我々と障害者問題を、そう簡単に切り離せないことを意味している。

どんな社会にも、進化の側面と同時に負の側面がある。これはコインの裏表なので、片方だけを消し去ることはできない。進化の側面だけを強調して「きれいな」「強い」社会を作ることに力点を置き過ぎれば、負の側面をむりやり隠すことになる。それは本来社会の改善とは違うものではないか。「精神的にも健康な子供達」を増やそうという一見まともな正しい考えも、過度に進めば、この社会の負の側面を隠蔽する流れに(某市長自身も知らないうちに)利用されていくのかもしれない。そこから生まれる結果は、最初思っていたこととは逆の、残酷なものになるかもしれず、"きれいごと"ばかり言っては社会が成り立たないという考え自体が、結果的に"きれいごと"につながっていく可能性もある。

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