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2010-04-22

DTPから見た電子書籍のこと

近頃何かと電子書籍、電子書籍と世間で騒がれている。最先端のツールなのに「電子書籍」って表現が古臭いけど、年輩向け??

仕事で雑誌・本を作っています。書籍がデジタル化されるって言われても、もう10年以上前から本や雑誌を含めた印刷原本自体がどんどんデータ化されてきたので、何をいまさらです。電子書籍の普及については、黒船が来たらあっという間だという意見から、いやいやまだまだ無理だろうまで賛否両論ですが、私ら実際に書籍データを毎日扱っている人間からすれば、どうせ本の実態はすでにPCの中にあるんだし、いつでもオッケーよheartって感じです。

まだiPadを触っていないのですが、きっと宣伝してるほど便利ではないと思います。ただ、インターフェイスの改良は普及につれてアッという間だろうから、問題にならないと思ってます。

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印刷出版業界の20年ほど昔をふりかえると、まだ写植が電子機器になったころは、画像をデジタル処理できるコンピュータもメインフレームのような巨大で何千万もする高価なものでした。そこからほどなくマックが登場してDTPという言葉が誕生。その時代から今の状態まで、ものすごいスピードで「電子化」されちゃったw感じです。

昔は日本語化されたMacOSが「漢字トーク」と呼ばれていました。日本語をINPUTからOUTPUTまでPCでいかに処理できるかが、まだまだ課題でした。一番の障壁は日本語フォントだったと思います。

日本の印刷業界には活字写植の時代から、モリサワと写研という2大フォントメーカーがあって、もともと同じ所から出てきた兄弟のような企業なのですが、フォントのデザイン的には写研のほうが優れていて、東京を拠点とした写研が関西を拠点としたモリサワを圧倒していました。おそらくこの劣勢にあったことが功を奏したのでしょう。DTPが誕生した頃、モリサワは自分とこのフォントデータを早くからデジタル化の波に乗せて、書体の提供に立ち後れた写研を追い越し、あっという間にシェアを逆転させてしまった。この話、このブログとかも書いてますが、典型的な企業上層部の判断ミスの物語りと言えます。

当時モリサワがやったことは、時代を読んで一種の規制緩和に乗った流れだったのですが、それによってDTP業界で独占的なフォント販売権を得て、今度はモリサワ自身が規制緩和の障害になっていきます。

やがてDTPが当り前になって、インキで印刷するのは最後の工程だけ、新聞でも本でも最後の一歩手前まで全データ化されてきました。するとMACのシェアが多いことが音楽業界以上にDTPでは問題になってくる。

PCそのものとしては事務系は完璧にWindowsの勝ち状態だったので、一般的な企業や官公庁の文書などもどうDTPに取り込んで行くのか? PDFが登場したと同時に、MACでもWindowsでも共通のフォント技術が求められ、OpenType というものが出てきました。自分のPCのフォントフォルダーをのぞいてみて下さい。緑色のアイコンで大文字の「O」になってるやつです。

実際これはフォントのライセンスの問題に直結する技術だったわけですが、MAC OSXが登場した頃、大日本スクリーンが自分達の開発していた(品質は良いが)マイナーだった書体を、AppleにOS標準のフォントとして提供するに及んで、かつて時代の波に乗って書体ビジネスを独占したモリサワは、完全に規制緩和への抵抗勢力のような企業となり弱体化してきています。

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話を電子書籍に戻しますが、DTP普及を体験した者から見て、今後出てくるツールの未熟さはあまり問題にならないだろうと、そこは強調したいと思います。

DTPでも15年位前は、たかだかA3の印刷用フィルムを出力するために高価なイメージセッターというもので数時間かかりました。しかも出力しても文字が化けたり、複雑なイラストは出なかったり、そもそもA3以上の大きさで出せなかったり、いろんな問題がありました(よく徹夜したな〜)。それが今やフィルムを介さず直接大紙面の印刷がPCから可能になっています。そのうち巨大な印刷機は減って、家で使うインクジェットプリンターの化け物のような機械に取って替わるでしょう。かつてのフォントの問題と同じで、電子書籍の端末にも、kindleだけが独自の電子インク技術を持っているとか、何かと共通規格が見えてこない問題があるようです。しかし今、iPadやkindleに多少不便な面があっても、改善には数年、いや数ヵ月でどんどん進歩していくだろうと予測できます。

便利な使い勝手のことばかりニュースされていますが、電子書籍の画期的な面はそのストレージの大きさでしょう。東京都立中央図書館の蔵書数 148.2万冊が、iPad3台分に入るという計算をした人も居ます。最大64GByte入るというiPadは、約50万冊の新書を収納することができる。そんなことが嬉しいかどーでもいいかにお構い無く、ちょっとした図書館がうすい携帯端末に納まるのです。自作PCマニアなら御存じのように、データストレージの容量進化は目を見張るものがあるので、この数字もすぐ超えて行くでしょう。iPodに個人の音楽ライフがすっぽり入ってしまったのと同じことが、本に起きます。データ化されれば、個人の部屋の蔵書なんてスカスカみたいな存在です。

DTPでは、かつて数十人の人間が関わって本が出来ていった工程が、MACの前に座る一人のオペレータに置き換わりました。電子出版でも同じことがきっと起こります。けっして表面的に騒がれている景気回復の話では無いです。もっとキッツイ、リストラな話です。どこかの有名な作家がアマゾンと直接契約を結ぶでしょう。そんなたったひとつの衝撃で、ある一つの本というアナログな実態に関わって職を得ていた数十人、数百人の人が方向転換を求められます。デジカメの普及で、銀塩フィルムの製造中止などここ数年写真素材業界に起きてきたことが、書籍製造と流通に関わる業界を襲います。

この前、大手の出版社など31社が『日本電子書籍出版社協会』なるものを作りましたが、言っていることを聞いていると、まだまだ既存の出版形態をどう保護していくかという守りの姿勢が強い匂いがします。書籍販売は日本独特の仕組みがあるし、取次業者もあるし、アナログな仕組みを通じて飯を喰っている人達が(自分のようなデータ作成者も含めて)たくさん住んでいる世界なので、黒船上陸を前にしてある種の抵抗は当然です。

ただ、出版業界が、印刷業界における昔の写研やその後のモリサワのような存在になっていくとしたら、先細りは目に見えています。技術進化のスピードがアップしているので、これからの方向性は半年ぐらいの間に明確に示していかないと、また日本の出版もガラパゴスなんて言われちゃうんじゃないでしょうか。

iPadすごい!って言ってる人達にはイマイチ乗れない私ですが、逆らえない波のことは考えていかないと、えらい目にあいますよ。

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コメント

なんか今つきあっている女優の子もバイトで校正テープ起こしやっていますが、収入が半分になったそうです。
 おかげでお手当のアップ春闘を起こされています。

そうですか、お手当奮発してあげちゃって下さいw
電子書籍はこちらの仕事にもきっと影響必至ですが、もういい年なので、開きなおってます(*^-^)

仕分けが終わり残った古い愛人達の面倒は死ぬまで見ますけど、年齢制限で銀座赤坂六本木南北栄を追い出された女優の卵は結構編プロや校正.翻訳会社でバイトしています。
 電子書籍で、笠井潔が予言していたように、出版社
印刷会社がいらなく成ると、残る紙媒体はR25的フリーペーパーや17.18世紀的好事家向けのマニアテックな本だけに成るかも、文化の崩壊です。
 

笠井潔って「テロルの現象学」のあの作家のことですか?
R25はさておき「17、18世紀的好事家向け」本が残るってのは、けっこうその手が僕も好きなんで分かる気がします。ほらこのブログの右サイドのリンク集にも「慶應義塾大学所蔵/博物誌コレクション」てのもありますでしょw
あー確かに大型本の画集とかって無くなってほしくないなー。うちの本棚にもありますわ。1.3万円の「パウル・ヴンダーリッヒ」の版画集とか...。

http://visualartbook.blog75.fc2.com/blog-entry-36.html

懐かしいですね。テロルの現象学.バンパイヤー戦争の笠井さんです。
 いまはヘンな人になっているそうです。
もっとも伊豆のビラまき男=日本のレーニンも山の中の学校でヘンな人になっています。

>文化の崩壊です。

それは違うでしょう。
既存の雑誌書籍流通が崩壊するだけです。
そのかわり著者たちはバルザックの時代に先祖返りすると・・・自前で流通を整備しなきゃならないorz

お言葉返すようですが、岩波文化が崩壊したように、ファスト化して生き延びようとした共同幻想としての中流文化の終焉だと思います。
 もしかしたら、バロック化した趣味的出版は中世の占星術やマキャベリの君主論のようにクローズされた、密教を生むかも。
 思想とは、本質は密教的な物かも、酔っぱらいの歴史学者家永先生の弟子にも、陰陽五行師がいます。

>共同幻想としての中流文化の終焉だと思います。

そうかも知れませんが、読者目線で見るとファスト化が中途半端なのが通用しなくなったと見るべきかと。

ケータイ小説の勃興など既存に読書界からはボロクソに言われていますが、ファスト化した狭い世界観と低い読解力に対して既存の物書きは十分な対応ができていない。誰にも理解できる文章を書けと言っている連中が・・・。

岩波文庫は知識=高価を破壊した。今求められているのは、予備知識のない人にいかに本物を提示するかではないか?それはいわゆるインテリの破壊でなければならない。池上某のモテぶりなどを見ていてもそんな感じがしています。

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