« 平和賞を冒涜しているのは中共だ! | トップページ | ロシア帝国主義についての佐藤優の発言 »

2010-10-11

ETV特集「“小さな金融”が世界を変える」

昨日のETV特集「“小さな金融”が世界を変える アメリカ発 元銀行マンの挑戦」<世界が注目する金融ビジネスをワシントンで立ち上げた元銀行員・枋迫篤昌(とちさこあつまさ)氏の物語。なかなか良かった。こんな日本人も居ることにちょっと感動!

移民労働者が日雇いで稼いだ金を祖国の貧しい家族に送る金額などたいした額では無い、まさか世界の経済全体に与える影響など知れているだろう...ついそんなふうに思える。しかし調べてみると、08年の「インターナショナルヘラルドトリビューン」紙(11月2日付)が報じているが、07年の1年間にアメリカの移民労働者が本国に送った送金総額は3,000億ドルに達すると言う。この金額は先進国政府の途上国政府に対するODAの3倍だとか。

アメリカ在住の方のブログなど読んでいると、給与は小切手で支払われることが多いなどと書いてある。これじゃ基本的に銀行口座を持たないと現金化できない。しかし銀行口座を開くためには公的な身分証明書が必要であり、また外国人の場合は有効なビザを提示しなければならないなど手続きが面倒。従って不法滞在者は銀行口座を開けないわけである。ある意味この制度は国家安全上の対策にもなっているのだろうが、その一方で貧しい移民労働者などに銀行口座を持てない人たちが多いという現実を作り出す。

だから移民労働者が祖国の家族へ送金するという、この膨大な資金の流れは、既存の銀行よりも中小の送金業者に、法的な整備も進まないまま任されてきた。こうした送金業者の中には高額の手数料を要求したり、犯罪との関連も指摘されていた。またこの中小業者を代理店として取り仕切り強大な政治的影響力を持つ、移民向け小口送金サービス大手「ウエスタン・ユニオン(WU)」という壁も存在する。上記「インターナショナルヘラルドトリビューン」紙の記事も、このWUの資料を例に使っており、いかに強大な組織か想像できる。

移民労働者の多くは日雇い現金収入のその日暮らし。それでも祖国で貧農をやっているだけでは一日5ドルにしかならないが、アメリカで働けば白人よりまだ安いとは言え二倍三倍の日給が出る。彼らはわずかな生活費を使い残りを祖国の家族に送金する。大手銀行に口座を持たない彼らが、送金業者の窓口に毎日相当数が訪れる。他方祖国の支払い窓口には、長らく会っていない父や兄・息子・娘からの現金を生活費や教育費に充てようと、毎日ものすごい数の家族が集まる。しかし防弾ガラスと鉄格子で防護されたその窓口に心の暖かさなどあるはずもない。送金時まず15%以上の手数料が取られ、送金を受ける家族側も、米ドルをメキシコ・ペソなどへ変換する為替手数料などでまた20%ふんだくられる。これでは送金した現金の7割り足らずしか家族に届かない。なんとも理不尽な貧困ビジネス。

--------------------

そこで日本人銀行マンの枋迫氏は、ITシステムを使って格安の送金システムを開発することを考え、アメリカで「マイクロファイナンス(MFIC)」という企業を立ち上げた。

ITを使うそのシステムが起動するためには、送金先の発展途上国の銀行が出稼ぎ移民労働者の家族への支払い窓口として協力してくれる体制が必要だ。また、もちろん途上国の銀行だけでなく、移民が暮らすアメリカの大手銀行や政府にも送金窓口として協力してもらう必要がある。しかし銀行というものは元来貧しい人々を相手にしてこなかった。そこが枋迫氏にとって大きな壁になる。

枋迫氏はベネズエラやブラジル、メキシコなどの地方銀行と交渉を重ねた。最初は利益が出ないと提携をためらっていた銀行も、「祖国の貧困撲滅」という理念に支えられた新しい金融を提案する枋迫氏の熱意にしだいに動かされ、提携先も徐々に増えていった。

アメリカの銀行からも最初は相手にされなかったそうだが、米政府や連邦準備銀行とも交渉を重ねてとうとう理解と支援を得られるまでになった。交渉途上、9.11同時多発テロもあったりして、移民への送金はテロリストにも利用されやすいことから一時困難な状況に陥ったそうだ。しかし枋迫氏は自身が進めるシステムで米政府がリストアップする送金禁止者リスト(いわゆる「愛国者法」に関連して出来た)への連動アクセスを可能にし、セキュリティを高めたことから評価が一変。MFICが独自開発した国際送金システムは、今や米連邦準備銀行の次世代送金システムに採用されるなど、非常に注目されているそうだ。現在MFICの送金決済ネットワークは、広く世界の金融機関に開放され提携金融機関は急増、世界90カ国、約3万拠点が相互に結ばれさらに増え続けている。

枋迫モデルの送金手数料はそれまでの送金業者よりも格段に安く、200ドルに対して3.5%。店には防弾ガラスや鉄格子は無く、顧客を仕切るのは普通のカウンターだ。ワシントンの中南米系居住区にあるMFICの店舗を訪ねると、そこに居たボリビア人の利用者が言う。「この国に来て初めて人間らしい扱いを受けた」

でも枋迫モデルで感心したのは送金システムだけではない。送金資金はある程度まとまってから祖国の銀行に送られる、そのタイムラグに発生する滞留金を利用して途上国の人々に無担保小口融資をしているのだ。しかもその需要は、実際に送金システムを利用している出稼ぎ移民たちの相談から発生する。「ハリケーンで家を失った親戚に資金を融資してくれた」というグアテマラ人が居た。また露店をやって生活資金にしたいと言う地元の母親に1000ドルを融資してくれたおかげで夢がかなった人も。既存の銀行では考えられない小口融資、マイクロファイナンスの名前の由来だろう。


--------------------

枋迫氏は東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)の出身だそうだ。50才の頃一念発起してアメリカに移住し、長い間温めてきた今の事業を始めた。若い頃メキシコなど中南米の支店に勤務しているので、英語だけでなく中南米の人たちと現地の言葉で会話できる。

その若い頃、スペイン語研修も兼ねてメキシコの貧民街の人たちと親しくなり食事に招かれたりした。そんなある日の帰り道、招かれた家の3歳の男の子が「今度はいつ来るの?」と聞く。なぜと問い返すと「だっておじさんが来ると久しぶりにお肉が食べられたから」。その時枋迫氏は「スープに浮かんだ黒ずんだ紙切れのようなものがそれだったのか」と愕然とした。あの貧しさを何とかしたい。銀行マンという自分の仕事は、この問題に何か役に立たないのだろうか?そう悩み始めたのが枋迫氏の原点にあるのだと言う。アメリカに出稼ぎに来ても英語が話せないことから差別的扱いをうけたりもする労働者やその家族にとって、枋迫氏の流暢な中南米系の語学力は相当な強みだと思った。しかしそれ以上に素晴らしいのは、枋迫氏が貧しい彼らの心に届く話ができることだろう。

この番組で一番感心したこと、それは一人の日本人が貧しい人たちを援助するための自立的なシステムインフラを、資本主義社会の仕組みを利用し改変することで作り出した点だ。それは今の政府がやっているようなバラマキ支援のような持続性の無いものではなく、援助もしない自立論のような机上の論理でもない。特に送金システムを使って、必要とする人々に本当に小口の融資を無担保でしようという発想は、一人ひとりの金額としては微々たるも総額としては巨大な資金の流れである出稼ぎ労働者の送金、それを使えばその労働者たちの作り出した資金が祖国の人々を救うという新しい壮大な発想だ。金融という同じ手法を使いながら、片や明らさまな貧困ビジネスであったサブプライムローンと比較してみれば、その違いは歴然たるものだろう。

もちろん金融は金融だから全て上手く行くはずもない。番組の中で、焦げ付いた融資を不良債権化する手続きに来た銀行マンの申し出に、しかたなく決済のサインをする枋迫氏が、実に寂しそうな表情であったことが印象的だった。お客様に裏切られた気持ちと同時に「返せない状況を直接相談してほしい。顔と顔を会わせれば返済期限を伸ばすなどのことも考えられるので」そう客に言ってほしいと担当者に伝える枋迫氏のひたむきさ。

彼の友人で今も日本の大手銀行に努める人物はこう言う「もともと銀行とか金融とか、出発点は困っている人たちに資金を貸すことだったはず。トヨタだってホンダだって今では大きくなったけれど、最初の出発点は小さなお店でそこに資金を貸してくれる所があったからの今日なはずなのです。銀行というのはいつのまにかそういう原点を忘れてしまった。枋迫さんのやっていることはその原点を思い出させてくれるのですよ。」

枋迫氏は今度は、銀行を経由せず窓口を訪れる必要もない送金システムを開発するために、日本の携帯電話業者と提携を進めているのだという。

枋迫篤昌氏のプロフィールについてはこちらに載っている。

とくに起業理由の言葉はすごいな。ちまちました某左翼政党の貧困論じゃなくて、とにかく実行してしまうんだから。

『経済の血液である「金融」を社会の隅々まで送り届ける役を担う「銀行」が社会の底辺層に対しては全く使命を果たせていない。金融業務に携わる者の責任として、最も需要の多いこの層に対しても適正な金融サービスを提供するインフラを作ることが必要だ』

« 平和賞を冒涜しているのは中共だ! | トップページ | ロシア帝国主義についての佐藤優の発言 »

コメント

「一言居士」
日本でもやってくれないかと思います。
いわゆる「年収30%」の貸出規制、「地デジ」やエアコンもローンが組めないのかという声があります。
「日本は日本の法律」そうでしたね。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/120253/49710268

この記事へのトラックバック一覧です: ETV特集「“小さな金融”が世界を変える」:

« 平和賞を冒涜しているのは中共だ! | トップページ | ロシア帝国主義についての佐藤優の発言 »

aBowman

別荘はこちら

  • Marbles2
    音楽、美術、映画、本など趣味的なページはここに移転しました。考えるのが面倒だったので、タイトルは単に2です。

ウェブページ

2018年3月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

mail

  • 82pkdick@gmail.com

最近のトラックバック

無料ブログはココログ