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2010-11-13

「漁船」衝突ビデオ流出と世間の評論

連日のように尖閣諸島沖「漁船」衝突ビデオ流出問題がマスコミで取り上げられている。世論調査等のざくっとした感触では、件の海上保安官を評価するが 7~8割、残りのうち「分からない」以外の多くはセキュリティ問題や公務員の守秘義務違反として問題視する意見と見える。ただアンケートはまあいいとして、実際の現実はいろいろと関連仕合い繋がっている。

例えば中国の反日デモで流される映像。一部暴徒化した連中が日本企業の看板やショーウィンドウを壊しているのに対して、中共政府は「国家の方針に沿った意見の発露として捉えることができるので罪には問わない」と解釈した。「愛国無罪」=旧き「造反有理」の延長だ。日本人はあの映像を見て、中国も近代的法治国家を目指すのだからあんな道理の無いことを国が言っていてはならないと思ったはずだ。私も確かにそう思った。

TVである評論家が、この中国の反日デモの話を引き合いに出して言う。あの時、中国に法治国家を目指せと批判した日本人が、国家機密を流出させた公務員をヒーロー視するのは矛盾していると。日本は「民主主義」国家だから違反は違反だという論理だ。ここには微妙な短絡が含まれていると思う。一つは、日本は「民主主義」国家だから、行政は間違いを犯さないのかという問題。もう一つは、中国の反日デモでものが壊されるのは、投資した企業の資産が破壊されるのだから具体的に国際経済上、関係企業の不利益が生じる。一方今回のビデオ流出は、国民にとって何か不利益が生じるのかという問題。確かに中共と仙谷派wにとって不利益は生じるのだろうが....。

公務員の守秘義務違反も、内容はどうあれ公表してはならない情報を公表しただけで罪になる外面的な解釈から、公表したことによって具体的に国民が何らかの不利益を被ったかどうかによって違反にあたるかどうかを問う、実質的な解釈に変化してきていると言われている。だから守秘義務違反に当たるかどうかは裁判も含めて議論され検討されて初めて確定する話と言えるだろう。

私も件の海上保安官を評価したい方なので、先にその手の記事を書いた。もちろん今回の「流出」がセキュリティの問題や公務員のモラルの問題につながることは仙谷承知。この職員が逮捕、起訴から有罪になったとしても、法治国家としての根拠はあるとは思う。しかし、あのビデオ情報を知る権利があったし、国家に情報公開を要求してもおかしくは無い立場の一般市民としては、あえて率先して違反だ!逮捕だ!と騒ぎ立てる必要がそもそもあるのだろうか??

件の海上保安官を評価する人たちの中には、今回の事件をセキュリティの問題や公務員の守秘義務についての議論と分けて考えるべきだとする意見もある。しかしそれらを別個に考えるのは難しいだろう。むしろ今回の事件を通じて、セキュリティ問題や守秘義務問題が議論されるべきなのではないかと思える。

逆にビデオ流出の動機や"彼"の主張や、背景にある日本の政府の「政治的配慮」や中国の思惑を切り離して、セキュリティや守秘義務の議論に絞り込んで、"彼"の問題を追求する人たちも居る。私にはむしろ、そうした問題に絞って議論するほうが問題を矮小化していくのではないかと思える。矮小化することによって、セキュリティや守秘義務の議論自体も矮小化されるのではないか。例えば守秘義務違反だけを問うて済ますなら、国家や自治体行政が人権に関わる問題を隠していく場合、かつその情報が組織内部の一部の者しか知り得ない場合、公務員の守秘義務とは、当の公務員を、国民の知る権利を妨げていく行政ロボットに仕立てていくものでしかないだろう。

言うまでも無いことだと思うが、公務員が自身の知った機密をバンバン垂れ流すようなことで政治が成り立つなんて全く思っていない。ネット社会になって安易に情報が漏れる可能性大な時代だからこそ、公務員は(いや公務員に限らずだろうが)その情報の意味や重みを自分の頭で正しく判断できるべきだとも思う。公開しないことによって国民が不利益を被る情報も存在し得るのだから、情報の意味を考えるとはそこらへんの判断も関わってくる。だから私は、公務員の手による情報公開が罪になるかどうかは、その内容によって誰がどう不利益を被ったかで判断したいと思う。

とは言え、前からよく書いてきたことだけれど、権力と組織メンバーの関係は上下の力関係であることが多い。だから組織の中では波風立てないことが楽なのである。組織に不利益な情報は公開するよりされないことの方が多いと考えたほうが現実的。YouTubeという手段を使った公開が良いかどうかは議論の別れるところだろうが、それしか方法が無いとかそれが最適と考えさせた背景は何だろう。やはり中国という国は我々にとっても反面教師と思えてくる。おそらく件の海上保安官は、某メディアの取材で渡したメモから見て、こうしたこと全て踏まえてあえて職を賭してビデオ公開した可能性が高い。彼をヒーロー視する風潮を短絡だ幼稚だと捉える人も居るが、事柄を外側から見るそうした「評論家たち」が考えているより、おそらく問題の根は深いと思う。

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