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2015-04-12

AIIBへの左翼的感覚

少し前に話題になりました。twitterでの志位和夫の同じ発言がほぼ炎上、4月2日のしんぶん赤旗のこの記事には正直驚きました。まあどういうか、数年前の国会での北朝鮮ミサイル発射非難決議に共産党が反対したとき以来のがっかり感です。

日本共産党の志位和夫委員長は、1日、国会内の記者会見で、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に日本政府が参加を見送ったことについて、次のようにのべました。

アジアインフラ投資銀行(AIIB)の動きは、大きくとらえると、世界銀行・国際通貨基金(IMF)体制が、アジア経済、世界経済の変化―世界の構造変化に対応できなくなっているもとでの動きです。
急成長するアジアでは、経済成長を支えるインフラ整備も巨額になっています。その時に、米国主導の世界銀行・IMF体制、そのもとでのアジア開発銀行(ADB)が、急成長するアジア諸国の金融上の諸課題、とりわけインフラ整備に必要な長期資金の要求に応えられなくなっています。
また、融資にあたって「構造改革」の名でアメリカ型経済システムを押し付けるなど、米国主導の国際金融システムへの不満が非常に大きくなっています。
そうしたもとでAIIBの動きは、従来の一部の大国中心の経済秩序ではない、新しい国際経済秩序を求める動きといっていいと思います。
この動きにきわめて消極的な日本政府の対応は、世界とアジアの大きな動きをとらえられない視野の狭さ、もっぱらアメリカの顔色だけをうかがうという自主性のなさが露呈した、あまりにも拙劣なものです。
アジア諸国はこぞって参加し、韓国、オーストラリアも参加、イギリス、フランス、ドイツなど主要な欧州諸国も参加しています。日本は、「出遅れ」は否めませんが、今からでも参加すべきです。公正・民主的な新しい国際経済秩序を展望した国際金融システムをめざすという立場で、アジアインフラ投資銀行に参加し、ルールづくりに参画していくべきです。


AIIBの問題でのこういう「バスに乗り遅れるな!」的な論調は、共産党に限らず朝日新聞などの左派系メディアも同じようです。また左派系に限らず、維新の党の江田憲司も「中国外交の勝利、日本外交の敗北だ」と述べて政府のAIIB不参加を批判したとか。さらに政府与党内にも不参加批判、慎重論批判があるということです。しかしこの問題での保守系の政府批判は、中国の意図など公平なはずがないとの前提で、かといってアメリカの力が弱まってきている今、これからの新しい国際関係に日本が消極的では、日本の企業にとって大きなマイナスになるといった視点がほとんどのように読みました。これらは、中国のあたらしい戦略を「公正・民主的な新しい国際経済秩序」と言い切る共産党とは、同じ政府批判でもかなり中身が違うと思います。イギリスなどが急に参加したのも中国の統括力を少しでも監視しようとの意図を感じるし、そもそもヨーロッパ諸国は、安全保障的な視点で中国との問題に取り組む必要が薄く、あくまでビジネス上の利害を考えて参加を決めたのでしょう。

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AIIBに参加すべきか慎重になるべきか、私もそこは、すぐに参加する必要は無いと思いつつも、今後いっさい関わらないでいいとも思わない。また中国の経済力がここまで大きくなった現在、全く関わらないわけにもいかないでしょう。ただ、AIIBとは何か?

....資金の50%が中国で、その組織のトップが元中共の官僚、組織内の公用語は中国語、融資決定機関のメンバーの4割は中国人。中国政府=中共だというあたりまえの事実をベースに考えると、この組織のいったいどこが「公正・民主的」なのか??AIIBは、明らかにアジア諸国で中国主導のインフラ整備を推し進める出先機関の役割を中国共産党から担っている。産経新聞の論説のように、中国の資金で作られた東南アジア諸国の空港に中国の航空会社が最も多く便を乗り入れるようになり、中国資本で作られた民間の港にやがてじわじわと中共の軍艦が停泊するようになるというのも、いかにも有り得る筋書き。中国単体でやるよりも多くの資金を集めるのが狙いなので、国家プロジェクト的なより大きな投資が実行できる。中国資本が北朝鮮のインフラ整備を援助すれば、日本の経済制裁など何の効果もなくなるとの保守系の論調も、あながち被害妄想には聞こえない。

またたとえば、AIIB傘下で中国企業が原発をアジアで売っていった結果、東南アジアなどに中国製の原発が多数建てられるわけです。参加慎重論を批判する左派系の論理はそこをどう捉えているのでしょうか?私はどちらかと聞かれれば原発反対ですが(むしろそうだからよけい考えるわけで)、朝日新聞や共産党の主張がそもそも矛盾していると思うのは、普段政府の原発政策を猛批判しているこれらの左翼が、中国が原発大国を目指している事実を知っていることでしょう。例えば今年の2月の朝日新聞の記事に「中国、原発大国へ再始動 発電能力5年で3倍計画」とあります。

中国政府は今年、福島第一原発の事故で凍結した新規の原発建設を本格化させる構えだ。5年で発電能力を約3倍に増やし、世界第2位のフランスに迫る計画。膨らむエネルギー需要と環境対策という課題を抱える習近平指導部は、「エネルギー生産と消費の革命」を掲げ、原発大国化に大きくカジを切ろうとしている。(2015年2月12日の記事)


また昔の核兵器反対運動にあった妙なへ理屈みたいに、中国の原発は安全とでも言うのでしょうか?

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今回、AIIB問題での政府へのいろんな批判論、賛成論がネットでも飛び交う中で、この人の話は割と納得できました。

「中国主導のAIIB参加で日米孤立」(朝日新聞)に反論する〜日本は焦ってAIIBに参加すべきではない!日米参加を切望しているのは中国のほうである理由(blogos.com/article/109502/)


日米が主導するADB(アジア開発銀行)は環境への影響評価に厳しく、大気汚染や土壌汚染などの環境破壊を伴う可能性が大きい経済開発には、計画を変更しない限り融資がなかなか許可されないということらしい。それでも過去のADBによる融資の最大の受益国は中国なのです(2014年9月現在、ADB貸付残高538億ドルの中で中国が26.8%)。ならば、なぜ中国はあえてAIIBを作ったのかがポイントかと思います。結局ADBでは中国にとって審査基準が厳しすぎて、アジアのインフラ整備に進出するのにきわめてやりにくいということでしょう。わかりやすく言えば、自国内の経済だけでは近々飽和が来る中国が、アジア諸国に自分とこの危ない安物を売りつけたくてしょうがなくなってきたということなんじゃないか。

かつてアメリカ主導だった世界経済の構図が、中国の台頭で変わってきているのは誰が見ても事実で、AIIB参加慎重論への批判は、朝日新聞や共産党を筆頭に、いつまで対米従属なのか!といった主張がベースです。ではアメリカの力が弱くなった反面何が問題かと言えば、イスラムで起きている宗教の問題と、ロシアと中国の新しい帝国主義の問題だと思います。対米従属批判だけで見るとココを見落とす。だからAIIBの中に入るにしろ外から覗うにしろ、これからの中国の覇権主義をどう制御できるかという視点は共通して保持すべきでしょう。

冒頭の赤旗の記事で一番驚くのは、中共の捉え方についての日本共産党のその感覚です。大昔(戦前)はコミンテルンの日本支部だった日本の共産党も、戦後ある時期から路線を転換し、私などが党員だったころは自主独立を何かと強調する党でした。実際ソ連から干渉を受けたり、中共とも仲が悪かった。80年代末の天安門事件の頃は、細かく見れば他との微妙な論調の違いはあっても、概ね中共に批判的だった。それがソ連東欧の社会主義国家が崩壊した後、一説では90年代に中共側から近づいてきたということらしいが、日本共産党と中国の共産党はしだいに交流を深めてきたようです。日本共産党側でこの手の路線変更を主導したのは言うまでもなく不破哲三だったけれど、最近の志位委員長の発言を見るとこれは現在の日本共産党の既定路線となっている感があります。

中国政府と日本の政府は今うまくいってない印象ですね。でも、首脳どうしが目すら合わせなくても、外務省レベルの割と序列が下のほうの官僚どうしの会議なら時々あったりするらしい。また多国間の国際会議で出会うことは当然あるわけで、政府関係者が会合ごとに対策を立ててのぞむに越したことはない。現在の日本共産党と中国共産党は定期的に会合を開いていて、そこではマルクス主義上の理論交流という名目ながら、実際はウラでその時々の近く開かれる政府間会議の事前情報を日本共産党側が流したりしていると聞きます。中共にとってこれほど便利な日本の政党もないということから、何らかの視点を共有してくるのも想像つきます。日本共産党が国内で中共に利便を謀るような政治的発言をするのは、こうした方向からも見えてきます。

もう昔のような自主独立など、今の日本共産党にとってはお題目にすぎないのだなと思います。

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コメント

前代未聞の無格付け債権を韓国におしつけるあたり日本が参加しないでよかったと証明されましたね。

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