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2015-09-22

集団的自衛権の議論をめぐって-2

安全保障関連法案は一応可決されましたが、その国会審議は迷走の連続でした。

しかしそれにしても、今回ほどテレビのニュースの偏りの酷さは、見るに耐えませんでした。新聞雑誌はまだ右から左まで意見の巾があるものの、テレビはとにかく国会前の反対派の騒ぎを映していれば事足りるかのような状態かと。国民に理解が深まらないうちに「強行採決」されたとの反対派の見方は事実でしょうが、国民の理解が深まらない大きな一因にテレビのニュース報道をあげてもいいのではないでしょうか。

反対派は「これで終わりにしない!」と叫んでいましたが、今後も議論が続くようなので、私がネットを通じてこの間読んでいたいくつかの記事や本から、参考になりそうな事実や賛成派の意見を少し集めてみました。冷静に議論するためには必要なことかと思います。

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勝股秀通 (日本大学総合科学研究所教授)の意見より

WEDGE(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5158)から抜粋

(1)1993年4~5月

この頃、自衛隊が初めて国連平和維持活動(PKO)に派遣された。カンボジア民主化の為の総選挙でのこと。武器使用を前提とした警護は憲法で禁じた武力行使に発展するとされるので、PKO協力法による自衛隊活動に、現地日本人や一緒に活動する他国軍の兵士を守るという「警護」の任務は無かった。しかし、ポル・ポト派による選挙妨害が相次ぎ、日本人の国連ボランティアが殺害された。また、岡山県警から派遣された文民警察官もゲリラに襲撃され死亡した。この時、政府は日本からボランティアとして派遣された41人の選挙監視員を自衛隊に守らせようとした。

法制上、自衛隊員は自分の身を守る正当防衛にしか武器の使用が認められていない。敵を発見しても、撃たれなければ反撃できない。だから選挙監視員と襲撃してくるゲリラの間に、人間の盾となって立ちはだかり、相手が攻撃してきた場合だけゲリラを掃討するという指示が出された。銃撃戦は必至と判断され、精鋭のレンジャー隊員ら34人が選ばれた。指名された隊員たちの多くは、妻や子、親兄弟に宛てた遺書を書き残し、“その時”に備えた。幸い、彼らがそんな人間の盾になるような悲劇は起こらなかったが......。

(2)1994年11月

ルワンダ難民の救援活動に派遣されていた自衛隊が武装難民に襲われたが、車両を奪われた日本の医療NGOのスタッフを救出した。

(3)2002年12月

東ティモールの首都ディリで暴動が発生。緊急出動した現地の自衛隊は、孤立した国連事務所の職員ら日本人を含む7カ国41人の民間人を救出し自衛隊の宿営地に収容した。

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【安保法制公聴会】外交評論家・岡本行夫氏の国会証言

(産経:http://www.sankei.com/politics/print/150713/plt1507130011-c.html)から抜粋

(4)商船隊護衛について

ホルムズ海峡からインド洋に抜ける海路は、タリバンが麻薬と武器を輸送するルート。マラッカ海峡から日本に向かう海路は、その先に中国が支配しようとしている南シナ海がある。また欧州からスエズ運河、バグエルマンデグ海峡を経てアラビア海に出る日本の船舶は、ソマリア海賊が待ち受けるアラビア海峡を通る。2000年以降ソマリア海賊の襲撃は1000回を超え、4000人を超える人質が取られた。

海賊からの商船隊護衛に限ってみても、この膨大な海域で日本単独で日本人の生命と船舶を守ることは無理。日本の護衛艦は1990年代には60隻あったが、予算上の理由で現在47隻にまで削減されている。このわずかな護衛艦で2600隻の商船隊を守ることなどできるはずがない。このことから、日本の場合必然的に各国の海軍と共同しての護衛になる。自衛隊の護衛艦は、今年の5月までに663隻の日本の民間船舶を護衛したが、同時に2900隻以上の外国船舶を護衛し、海賊の襲撃から守ってきている。

(5)日本人の救出について

1994年、イエメンの内戦で96人の日本人観光客が孤立したとき、救ってくれたのはドイツ、フランス、イタリアの軍隊だった。

2000年以降、総計238人の日本人が11カ国の軍用機や艦船などで救出されてきた。1985年3月、イラン・イラク戦争でイランの首都のテヘランが危機になり、日本人215人が孤立したが、日本の民間航空機は危険だからといってテヘランまで飛んでくれなかった。それを救ってくれたのはトルコ。トルコ政府は救出に派遣した2機のうち1機を日本人救出に当て、そのために乗れなくなってしまった何百人かのトルコ人を陸路で脱出させた。

また、日本では報道されていないが、2004年4月、日本の30万トンのタンカーの「高鈴」がイラクのバスラ港沖で原油を積んでいた際に自爆テロボートに襲われた。そのときに身を挺して守ってくれたのは、3人の米海軍軍人と沿岸警備隊員だった。彼らは日本のタンカーを守って死に、本国には幼い子供を抱えた家族が残された。こうして国際社会では、お互いが助け合っていかなければ生きていけない情勢になってきている。

(6)公務員や援助関係機関の職員の活動

安全保障や対外関係に携わる公務員にとってリスクは不可避である。だからこそ、多くの日本政府や援助関係機関の職員が命をかけて危険地域で活動してきた。

ある著名な憲法学者は、「外務官僚には自衛隊に入隊を義務づけて、危険地域を体験させよ」と主張している。そうすれば自衛隊を危険地域に送る法律は作らないだろうという主張らしい。こうした現実を無視した意見によって反対論が主導されているのは不幸なことだ。

事実は逆である。危険だから自衛隊を派遣できないとされるバグダッドには、二十数名の外交官が大使館に住み着いて必死でイラクの復興のために今日も走り回っている。すでに2名の外務省職員が尊い命をテロリストに奪われたが、彼らはひるむことなくバグダッドに踏みとどまり、今も職務を全うしている。

バグダッドに置かれた各国大使館のうち主要国をふくむ24カ国の大使館には武官が駐在し、軍同士でしか行われない情報交換を活発に行っている。しかし、日本の大使館には1名の武官も駐在していない。もちろん防衛省や自衛隊が腰が引けているわけではなく、危険な地域には自衛官は派遣しないという政治的に作り出された方針のためだ。本来は武官をバグダッドの日本大使館に常駐させることは、日本自身の安全に必要な情報を得るために必要なことだ。

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最後に、小川和久氏の著書『日本人が知らない集団的自衛権』(文春新書)から引用

戦力投射能力とは、多数の戦略核兵器によって敵国を壊滅させることができる能力、又は日本のような島国で非核政策をとっている場合には、海を渡って数十万規模の陸軍を上陸させ、敵国の主要地域を占領して戦争目的を達成できるような構造を備えた陸海空軍の能力のことを言う。

仮に朝鮮半島を本格的に攻めるとすれば、50万人ほどの陸軍を上陸させて敵軍を粉砕し、首都を占領しなければ、戦争目的を達成できない。そのための作戦をしようとすれば3000機規模の作戦用航空機を持つ空軍力が必要であり、海軍は、数十万人規模の陸軍に応じた揚陸作戦能力を持つ空軍と、それを援護する戦闘艦艇、航空機が必要になる。

それに対して、現在の陸上自衛隊は定員15万1000人(現員13万7000人)、海上自衛隊は主要艦艇約140隻(45万トン)、一度に運べるのはわずか2000人ほどという兵員輸送能力しか保有していない。航空自衛隊は戦闘機など作戦用航空機は約440機を保有するのみで、兵員輸送能力はどんなにがんばっても3000人程度しかない。だから自衛隊は、本格的な海外派兵をしたり、戦力を投入して外国を占領できる構造を持つ軍事力ではない。限られた国土防衛における戦闘、つまり『専守防衛』だけで、侵略戦争などできるはずもない。

さらに自衛隊の現実の能力を見ると、海上自衛隊の対潜水艦戦能力と掃海能力は世界トップクラスだが、空母も巡洋艦も原子力潜水艦もない「単能海軍」である。航空自衛隊の防空戦闘能力も対地・対艦攻撃能力は限られている。これはアメリカの求めに応じて整備されてきた結果である。自衛隊は自立できない構造であり、わが国防衛も独自にはできず、日米同盟によってはじめて成り立つ。

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日本の自衛隊にも「空母のような」艦船はありますが、まあ戦闘機がバリバリ飛び立てるわけではないし、そこは置いといてと....。

安保法案が通ることで「日本がふたたび戦争をする国になる」などといった、感情的な反対論がありますが、軍事評論家小川和久氏の専門的な分析では、自衛隊はそもそも他国を侵略するなどありえない「戦争のできない軍隊」ということらしいです。

今回の安保関連法案では、PKO協力法が見直されました。一緒に活動する外国部隊の兵士やボランティアなどの民間人を助ける警護任務が法的に認められ、その任務への妨害を排除するための武器使用も認められました。

もちろん反対派から見れば、そこもまた、歯止めが無くなり際限無き武器使用に道を開くということになるのでしょう。でもせっかく国際ボランティアなどの平和活動の警護に行ってるのに、ゲリラが銃口を自分に向けていても、相手が撃つまで攻撃できないなんて、自衛隊の皆さんに対してあまりに酷い今までの法制度だったわけで。

今回の過程で、民主党の一部(きっと保守系の前原とかからだと思う)が対案を出す用意があるとの発言が、TV討論に出ていた民主党の議員からありましたが、結局出ませんでした。まともに対案出したのは維新のみだったのではなかったかと。民主党はどんな対案を考えていたのでしょうか? もし自衛隊員が危険に晒されるということを問題にするなら、安保法案反対だけじゃなくて、PKO協力そのものに反対しないと矛盾して来ませんか? .....というか、「アメリカの戦争に巻き込まれる!」というのなら、安保条約=日米同盟そのものに反対しないと矛盾します。憲法9条を字義どおり読んで安保法案が違憲というなら、自衛隊の存在自体や安保条約自体が違憲。安保法案反対で解釈改憲OKという暗黙の了解がもし民主党などにあるなら、けっこう身勝手です。

仮に、「海外で働く日本人が外国の軍隊に守られていても、自衛隊は何もしなくて外人さんに頼りっぱなしでいい」という意見があってもいいと私は思います。また、PKOとかしなくていいという意見があってもいいとも思います。わざわざアフリカまで行って、部族どうしの凄惨な争いにクビ突っ込まなくてもいいかとも思います。

でもそうなると今度は、日本の閉じた内側だけ見て「憲法9条守れ!」「戦争反対!」と叫ぶことを、あたかも崇高な理想であるかのように言うことに、どうも違和感が生じます。

「"自民党の"安保法案」に反対することは、別にかまわないことです。でも「反対!」だけで安全保障の議論の中身に入ろうとしないこと、そして自分たち日本の、内側の平和だけを変えないでいこうというのは、今の情勢では美しいことではない。それは日本人が外国の軍隊に助けられても感謝もしない、またそこで外国の兵士が死んでも、それすら知らないままでいることにつながる。アフリカの罪もない人たち、辺境で必死で生きる弱い立場の女性や子供たちが、となりの部族にナタで首切られて死んでいっても、関わらないで見てみぬふりをすることと繋がっていく。

一部の、特に既製左翼政党の、「9条守れ!」「戦争反対!」な人たちは、「一国平和主義」というものがそういうグロテスクな裏側を持つものだということを、もっと認識した上で言う必要があるのではないでしょうか。

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